公開日:2026年08月20日
- 製造業
- 省力化投資補助金
地域支援機関とともに生産性向上に取り組む企業事例(株式会社九州築地)
省力化機器の導入で受注増に対応、従業員の負担も軽減
この記事のポイント
- 受注増への対応と従業員の負担軽減に向け、省力化機器導入を決断
- 計300分かかっていたウロコ取りを12分へ大幅短縮
- 宮崎ブランドの魚を全国へ、そして海外へ
宮崎のおいしい魚を、もっと多くの人へ届けたい——。
宮崎県産養殖魚のブランディングに取り組み、「しまうら真鯛」「へべすぶり」など16種類のブランド魚を展開する株式会社九州築地。取引先からの引き合いが増える一方、手作業中心の加工体制が受注拡大の壁となっていた。
そこで、長年構想してきた省力化機器の導入を「中小企業省力化投資補助金」を活用して実現。タイ200枚のウロコ取りにかかる時間は、合計300分からわずか12分へ。
しかし、同社が手にしたのは「時間」だけではなかった。
生産者とともに宮崎県産養殖魚をブランディング
宮崎県宮崎市の株式会社九州築地は、1997年に設立された鮮魚卸の専門店である。高付加価値型のさまざまな養殖魚を目利きし、魚市場を通さず生産者から直接仕入れ、自社で加工し、ホテルやレストラン、空港内の飲食店などへ販売している。
現代表の築地加代子氏が代表取締役に就任したのは16年前。当時、宮崎の市場には県外産・海外産の魚が多く、地元で育った養殖魚がほとんど並んでいなかった。このことに疑問と危機感を持った築地社長は、県内の養殖現場を訪ねて回り、地元宮崎にも素晴らしい魚があることを改めて認識した。
さらに、取引先であるホテルやレストランのシェフの「こんなに良い魚が地元にあるのならぜひ使いたい」という声を聞き、宮崎の魚の市場性の高さを確信した。
「地元には素晴らしい魚がある。けれど、それを伝える仕組みが足りない。」
この気づきが、宮崎県産養殖魚のブランディングに取り掛かる出発点となった。
現在では、「しまうら真鯛」「へべすぶり」「西米良サーモン」「宮崎チョウザメ」など、計16種類のブランド魚を提供している。また、環境への負荷を抑え、従業員の労働環境や地域社会にも配慮した「責任ある水産養殖」を証明する国際的な認証制度「ASC認証」の取得にも生産者とともに取り組んだ。
加工品の需要が高まる一方、手作業中心の加工体制が課題に
ブランディングや認証取得が功を奏し、さらに、世界的な「安全・安心」「サステナブル」な水産物への需要が拡大したこともあって、ここ数年、同社への新規取引の引き合いが増えていた。
また、既存の取引先であるホテル、レストランから求められるニーズも変化しており、従来は活魚やラウンド(一匹丸ごと)の納品が主であったが、近年は、フィレや三枚おろし、切り身などの加工品へのニーズが高まってきている。
一方で、同社ではウロコ取りなどの下処理からカットまですべての工程を手作業中心で行っていたため、対応できる量には限界があり、増加する受注に十分対応できていないことが課題となっていた。また、手作業での処理・加工は、長時間にわたる包丁作業や前かがみでの反復作業を伴うため、従業員の身体への負担が大きいことも問題であった。
省力化投資補助金が設備投資の決断を後押し
このような課題から、省力化機器の導入は数年前から検討していたものの、同社の経営規模からすると大きな設備投資になるため、決断できずにいた。それでも、従業員とともに展示会へ足を運んだり、実際に機器を導入している企業を見学したりするなど、導入に向けた検討を進めていた。
そんな折、宮崎商工会議所からの案内で、「中小企業省力化投資補助金」の存在を知った。いくつもある補助金制度の中から省力化投資補助金を選んだのは、補助率の高さが魅力的であったことに加え、省力化や賃上げの条件を自社に課すことで、事業計画を進める覚悟を社内外に示そうと考えたためである。
事業計画書の作成にあたっては、築地社長が自ら作成し、宮崎商工会議所が支援機関の視点からアドバイスを行った。「事業計画書の作成は、ずっと頭の中で練ってきた構想や事業に対する想いを書き出したので、難しいことではなかった」と築地社長は振り返る。
申請の結果、中小企業省力化投資補助金(一般型)の第3回公募において採択され、立体型水圧式ウロコ取り機、タイ3枚おろし自動加工機、スキンナー魚皮除去機の3つの機器を導入した。
ウロコ取りの作業時間を300分から12分へ大幅短縮
それらの機器の導入により、すぐに効果が表れたのがウロコ取り工程である。例えば、タイ200枚のウロコ取りに、手作業では6人がかりで計300分を要していたが、機器の導入後は12分へと大幅に短縮された。従業員の身体への負担も大きく軽減され、「体が断然楽になった」「均一な仕上がりで手作業よりも早い」との喜びの声が上がった。
機器の導入により生み出された時間は、従業員の切り身カットの技術向上に活用している。これまで切り身カットはベテラン従業員1人~2人しか対応できない状況であったが、他の従業員へ教育する時間が確保できるようになった。また、作業場の清掃の徹底やHACCPへの対応にも時間を割けるようになった。
「お客様の要望に応えられる受注が増えた。宮崎のホテル、レストランは地元産の魚を求めている。そういう大口のニーズに応えられるようになったのは大変良かった。」と築地社長は話す。
宮崎のおいしい魚を全国へ、世界へ
「今回の省力化機器の導入は、ずっと構想していたもの。従業員のため、売上拡大のためにも必要だったが、大規模な設備投資であり、考えに考えて実行に移した。実際に機器を導入することで、未来を見据えてこれからどう経営の舵を取っていくか、というベースづくりができた」と築地社長は振り返る。
同社は、国際的な認証制度「ASC認証」を取得していることを強みに、海外展開を目指している。シンガポールの商談会に出展したところ、インドネシア、マレーシア、ブルネイ、タイなど各国の企業が興味を示したという。
海外でも宮崎ブランドの魚が食べられる日は、そう遠くないのかもしれない。
| 活用した補助金:中小企業省力化投資補助金 |
| 年度:公募回 第3回 |
| 枠・型:一般型 |
※本ページに掲載している補助金活用事例は過去の補助制度によるものであり、現在の補助制度とは異なる場合があります。最新の補助要件については、必ず公式情報をご確認ください。
企業データ
- 企業名
- 株式会社九州築地
- 設立
- 1997年
- 従業員数
- 8名
- 代表取締役
- 築地 加代子 氏
- 所在地
- 宮崎県宮崎市田代町250-2







