公開日:2026年06月02日
- 製造業
- 省力化投資補助金
地域支援機関とともに生産性向上に取り組む企業事例(マルシン機工株式会社)
新市場への挑戦、鋼板加工を4名から2名へ、省力化投資補助金で実現した高効率化と持続可能なビジネスへの想い
この記事のポイント
- 差別化できる強みを持ちつつも、将来的な市場の縮小への不安
- 新市場への進出、人材不足などの課題を省力化投資補助金活用で解決
- 機会損失の発生を抑え、かつ作業工程全体の高効率化へ
近年、水産資源の減少やそれに伴う価格高騰により家庭での魚離れが進み、水産加工業界では、今後の漁獲量予測などを踏まえながら設備投資を慎重に検討する動きが強まっている。
こうした中、札幌市に本社を構え、食品加工機械や搬送設備を製造するマルシン機工株式会社も、水産加工業界が主力市場である点は変わらないものの、他分野向け機器の製造にも積極的に取り組む必要があると判断している。
一方で、既存の設備や人員体制では、製作できるサイズに制限があるという課題を抱えていた。
この課題をどのように解決したのか、同社の竹内崇代表取締役に話を聞いた。
一貫体制と高い技術力で差別化
創業以来、水産加工業界向け機器の製造を主力としてきたマルシン機工株式会社は、同分野で高い技術力と実績を有する企業である。
同社の製造品目の約8割を占める水産加工業界向け機器は、加工方法や処理能力が異なる多種多様の機器が存在する。顧客のニーズに応じた最適な設備を提供するためには、関連する機械装置についての幅広い知識とそれに基づく適切なコンサルディング能力が必要であるところ、同社は長年の業歴を背景にさまざまな経験を積み上げ、豊富な知見を蓄積してきた。
「最大の強みは、発注者との打合せ、機器の設計から製造、納品後のメンテナンスまで、全て当社及び協力会社で一貫して対応できる体制を構築しており、高いエンジニアリング力と高精度なものづくり技術の両方をもっていること」と竹内社長は語る。
新市場への参入を阻んでいた設備制約
水産業分野ではこうした強みを背景に、独自の設計ノウハウという高付加価値を織り込み製作しており、これまで順調に売り上げを維持してきた。しかし、主力マーケットである道内の水産加工場が過去30年間で約35%も減少していることに危機感を覚え、新市場への挑戦も必要と考えている。
農業分野では、農業法人の増加などに伴い経営面積が拡大し、それに応じて設備の大型化が進んでいる。大学や研究機関では、リユース・リサイクル材料の耐久性や物性変化を検証するための大型材料試験装置の需要が高まっている。
「農業分野と大学・研究機関の設備は新市場と捉えており、これまでも受注依頼はありました。しかし、この両分野では大きな5×10鋼板(1,524mm×3,048mm)を折り曲げる必要があるケースが多く、導入前の機械では、高精度かつ安全に折り曲げることが出来るのは3×6鋼板(914mm×1,829mm)程度まででした。
無理に大きな鋼板を折り曲げようとすると、大きな鋼板は自重でしなるため、支える従業員が最低でも4名必要でした。
この作業に4名取られてしまうと、他の作業に影響することもあり、受注を見送り他社を紹介することもありました」と竹内社長は導入前の課題を振り返る。
省力化投資補助金の活用で実現した人手不足と設備課題の解決
設計からメンテナンスまでの一貫体制を構築し、順調に売り上げを計上してきた同社であっても、人材確保の問題は深刻であった。一般的な採用活動をしても応募者は少なく、高年齢の従業員も多く現役で従事している状況では、大判の鋼板折り曲げ作業に4名の人員を割く余裕はなかった。
こうした中、工作機械メーカーである株式会社アマダの石狩展示会で、自動追従装置付き大サイズ鋼板折曲げ機を紹介され、大判鋼板の折り曲げ作業を2名で行えるとの説明を受けた。これにより、「当社に導入すれば、これまで自社では製作出来なかった大きさの製品が可能となり、新たな市場にも参入出来るのでは」と考えた竹内社長は、懇意にしている中小企業診断士に相談した。
その結果、「中小企業省力化投資補助金(一般型)」の活用を提案された。
「過去にIT導入補助金(現:デジタル化・AI導入補助金)を活用したことはあったものの、省力化投資補助金の申請は初めてでした。大変ではあったが、中小企業診断士や株式会社アマダの支援のお蔭で乗り切れました。申請書を作成する過程で、当社の今後の推移を、数字を用いて具体的に考えたことは、何よりも得難い経験でした。」と竹内社長は笑顔で語る。
その結果、中小企業省力化投資補助金(一般型)の第1回公募において採択され、ハイブリッドドライブベンダー(自動追従装置付き大サイズ鋼板折曲げ機)を導入した。
4名体制から2名体制へ。人手不足を解消した設備投資の効果
導入後の効果は想定以上だった。竹内社長は以下のように説明する。
「大きな鋼板を曲げる作業は、従来は4名を必要としていたが、現在は2名で対応できるようになりました。これにより、外注でお願いするか躊躇していた製作物についても、現在の人員体制で完結できるようになりました。大きな鋼板は約70kgあり、4名で支えても担当する従業員にはかなりの重労働でしたが、導入した機械には、エアーで鋼材を吸着し上げ下げする機能も装備されており、2名での作業が可能になりました」
導入効果は、外注費の削減にとどまらない。
「従来の機械と比べて操作が簡易化されたことで、」プログラミングに要する時間が短縮されました。さらに、鋼材の曲げ方を調整する金型の交換時間も短縮されました。これらの効果を積算すると、加工時間は従来と比べ約7割も削減され、残業時間の削減にもつながっています。
また、加工時間短縮に伴い、新たに生み出された時間で組立や溶接作業などを行う人員も確保でき、作業工程全体で効率化を図ることができました」と、竹内社長は説明する。
省力化投資補助金を上手く活用し、将来を見据えるマルシン機工株式会社
マルシン機工株式会社は、補助金を単なる外注費の発生を防ぐ手段としてではなく、「従業員の負担軽減」と「新市場への挑戦」という両輪を回すための課題解決としての戦略的投資として上手く活用した。
同社は将来的に溶接を担う人材不足を見据え、溶接シミュレーターをいち早く導入し、2026年4月から稼働を始めた。溶接を担う貴重な人材が、新市場への挑戦を志し、同社に入社する日も近いかもしれない。
水産加工業界向けの多様な機器に対応し、さまざまな顧客ニーズに応じた最適な設備を提供するために、培ってきた知見と提案力を強みに、同社は今後も将来を見据えた取り組みを進めていく。
| 活用した補助金:中小企業省力化投資補助金 |
| 年度:公募回 第1回 |
| 枠・型:一般型 |
※本ページに掲載している補助金活用事例は過去の補助制度によるものであり、現在の補助制度とは異なる場合があります。最新の補助要件については、必ず公式情報をご確認ください。
企業データ
- 企業名
- マルシン機工株式会社
- 設立
- 1979年12月
- 従業員数
- 18名
- 代表者
- 竹内 崇 氏
- 所在地
- 北海道札幌市白石区川下2168番地の1







