公開日:2026年05月19日
- 製造業
- 省力化投資補助金
地域支援機関とともに生産性向上に取り組む企業事例(株式会社中央ネームプレート製作所)
「多角的技術の会社」が挑む—精密機械の高品質を陰で支える、省力化投資の真価—
この記事のポイント
- 多角化する事業に伴い負担が増加した最終工程での課題
- 段ボール製箱機導入で課題解決、時短を実現
- 設備導入の間接的効果で、工場全体の効率化と職場環境の改善へ
北海道札幌市に本社を構える株式会社中央ネームプレート製作所は、多品種少量生産に対応する高度な製造技術を強みに、金属加工から航空機部品まで幅広い事業を展開している企業である。事業の多角化とともに、最終工程である「梱包作業」が大きなボトルネックとなり、作業負担の増大や残業の常態化といった課題を抱えていた。
同社は、省力化投資補助金(カタログ注文型)を活用し、段ボール製箱機を導入した。これにより、従来10分以上を要していた製箱作業を約1分へと大幅に短縮し、作業効率の向上と労働環境の改善を実現した。さらに、創出された時間を活用し、他工程への応援体制を構築するなど、工場全体の生産性向上にもつながっている。
本事例は、設備導入による単なる省力化にとどまらず、現場の働き方改革や組織全体の最適化へと発展した好例であり、製造業における生産性向上のヒントとなる取り組みとして紹介する。
多角化する事業とボトルネックとなっていた「梱包」
同社は「ネームプレート」という社名を冠しているが、実際の業務内容は「名札から航空機まで」と表現できるほど、多岐にわたる。石狩第一工場では、金属エッチング(薬品を用いて金属を加工する技術)やアルマイト処理(アルミ表面に皮膜を形成する処理)を行い、第二工場ではプリント配線板、第三工場では精密板金加工、さらに第六工場では航空機のギャレー(厨房設備)部品など、高い精度が求められる製品を製造している。また、BtoB(企業間取引)に加え、「名札屋本舗」というブランドで楽天市場やAmazonにも出店し、個人のお客様へ直接商品を届けるBtoC事業も展開している。
「当社の事業が多角化し、成長すればするほど、現場では「梱包」という工程が大きなボトルネックになっていた。特に石狩第三工場で製造し、第五工場で塗装を行う薄物精密板金製品は、発送時に専用の箱を必要とする。その箱を切り、折り、仕上げる作業が、最終工程である発送現場の大きな負担となっていた」と氏家社長は語った。
製品ごとに異なるサイズが生む梱包作業の負担
同社の製品は多品種少量生産が基本で、製品ごとにサイズが異なるため、それぞれに適した箱を何百、何千と用意する必要があり、作業には想像以上の時間を要していた。石狩第五工場で「梱包」に従事する従業員は、1日5時間以上、出荷製品サイズに合う既製の段ボール箱を探し出し、それを切断して折り、出荷用の箱に仕上げる作業に従事していた。求人を行っても人手不足は解消されず、1日平均2時間の残業時間が常態化し、従業員の疲労は限界に達していた。さらに、業務量の増加に伴い、段ボール箱の加工時に、ケガをするリスクも高まっていた。
「指先の痛みや腱鞘炎など、労働環境の悪化により従業員の疲労が蓄積し、その結果、仕上がりにわずかなばらつきが生じていた。製品に適したサイズで箱を組み立てなければ、箱がわずかに大きいだけでも一つ上のサイズとなり、郵送コストが増加する。さらに、配送途中に製品が箱の中で動き、箱が破損するトラブルも発生しており、当社の信頼性に直結する重大な問題であると認識していた」と氏家社長は語った。
省力化投資補助金を活用した製箱機導入と生産性改善
「鹿児島にある同業他社の工場で、同様の機械を見学したことが、導入を検討するきっかけだった。当社の課題解決のため導入を急ぎたかったが、高額の機械でもあり検討期間を要した。折しも、今回導入した機械が、省力化投資補助金のカタログ注文型製品の登録となり決断することができた。販売事業者も支援してくれたので、補助金申請は比較的容易だった。」と氏家社長は振り返る。
同社の石狩第五工場に導入した段ボール製箱機は、平面の段ボール紙をセットするだけで、箱を組み立てるための罫線を入れ、不要部分を断裁する。出力後は罫線に沿って折り込むことで、短時間で箱を組み立てることが可能となる。
販売事業者からは、毎月、生産枚数や使用量、ロス率などのデータが提供されており、同社ではこれらを分析し、ロス率低減に向けた継続的な改善に取り組んでいる。
製箱時間を10分から1分へ短縮、現場を変えた設備導入
箱の大きさにもよるが、1つあたりの組み立て時間は導入前には10分以上を要していたのに対し、導入後は約1分まで短縮された。1日に何百、何千と箱を作る梱包・発送部門において、この時間短縮の効果は非常に大きく、投資効果も高いといえる。
「導入前は製品サイズに合う既製の段ボール箱を所定の場所まで探しに行き、見つけてから加工を始めるという手間があり、従業員は大きなストレスを抱えていた。段ボール箱を探す手間がなくなったことで、さらなる時短効果が生まれている。この現場は導入前、常に時間に追われピリピリした緊張感が漂っていたが、導入後は従業員が余裕を持って業務に取り組めるようになった。離職防止やモチベーション向上にもつながっている」と氏家功司 取締役製造部長は語る。
さらに、「これまで製箱・梱包・発送部門では、従業員1人あたり1日平均2時間の残業が発生していたが、導入後は月平均残業時間が10時間を下回り、直近ではほぼゼロになっている。創出された時間を活用し、当社の高品質を担保する製品塗装の検査やマスキング作業などに応援に行けるようになったことは大きな成果であり、工場全体の作業効率向上にも寄与している」と述べている。
「この機械を導入したことで、各々異なるサイズの製品に箱が適合することが可能になった。薄物板金製品はデリケートな製品であるため、箱の強度が一定であることは輸送時の安心感に直結する。お客様にとっても、届いた箱が美しく組まれていることは、当社への信頼感につながると考えている」と氏家社長は語る。
未来展望—効率化の先に広がる、次世代のものづくり—
同社の目標は、北海道から世界に通用する高品質な製品を届け続けることである。今回の製箱機の導入は、単なるコスト削減ではなく、従業員の力を「より付加価値のある仕事」にシフトさせるための戦略的な第一歩だった。梱包という「出口」がスムーズになったことで、同社はクリエイティブな「入口」と「工程」に今まで以上に全力を注ぐことができる。
今回の導入事例は、省力化投資補助金を活用し「創業以来培ってきた生産技術を基盤に、ものづくりに新たな付加価値を創出するとともに、お客様への貢献と社員の幸福を実現する」という同社の経営方針を、新たな視点で具現化したといえる。
石狩の広大な工場群から生まれる精密な製品たちが、洗練された箱に収められ、今日も全国、そして世界へと送り出されている。
| 活用した補助金:中小企業省力化投資補助金 |
| 公募回:令和6年度 |
| 枠・型:カタログ注文型 |
※本ページに掲載している補助金活用事例は過去の補助制度によるものであり、現在の補助制度とは異なる場合があります。最新の補助要件については、必ず公式情報をご確認ください。
企業データ
- 企業名
- 株式会社中央ネームプレート製作所
- 設立
- 1964年6月
- 従業員数
- 140名
- 代表者
- 氏家 利道 氏
- 所在地
- 北海道札幌市東区北39条東1丁目2番17号







