公開日:2026年07月30日

  • 宿泊業,飲食サービス業
  • 持続化補助金

地域支援機関とともに生産性向上に取り組む企業事例(有限会社ぴー坊)

白馬の自然を新たな価値へ変える若き三代目社長の事業承継と事業変革

有限会社ぴー坊 代表取締役 大塚栄青氏(右)
白馬商工会(現在は池田町商工会) 主任経営支援員 竹川万博氏

この記事のポイント

  • コロナ禍での事業承継を転機に、新たな事業を模索
  • 白馬の地域資源を生かし、宿泊業から体験型サービスへ展開
  • 商工会の伴走支援と補助金活用で、新サービスを具体化
長野県白馬村でグランピングやプライベートサウナを主力に、新たな観光業の創造に取り組む若き経営者がいる。コロナ禍の逆境の中、大学在学中に家業を継ぎ、宿泊業から新たな事業展開に挑戦。白馬商工会の伴走支援と、補助金活用で新たなサービスを展開し、イノベーションに奮闘する三代目社長の挑戦を追った。

コロナ禍で家業を継いだ若き三代目社長

長野県北安曇郡白馬村は、北アルプスの大自然と国際スノーリゾートが融合する地域である。近年は外資を中心としたリゾート開発が進み、地価が大きく上昇するなど、地域の事業環境も変化している。この地で宿泊業を営む有限会社ぴー坊は、もともとスキー客向けの宿泊施設を運営するため大塚社長の祖父が設立した会社である。
 
三代目社長の大塚 栄青氏は、コロナ禍真っ只中にあった2021年、大学在学中に代表取締役に就任した。二代目社長の父が体調を崩したことから、家族のために事業承継を決断したが、当時は外出制限の影響で営業は停止状態にあり、会社の危機的な状況のなか、大塚社長は、持ち前の行動力で新たな収入源を探り続けた。その努力が実を結び、コロナ禍でも新たなビジネスを生む。母校である地元白馬高校の学生寮不足に着目。自社の宿泊施設を生徒の下宿に使用することを申し出た。その結果、食事付賃貸契約を締結し、一定期間の安定収入の確保に繋がった。

コロナ禍の厳しい経営環境のなかでも、新たな需要を捉えることで事業を維持した大塚社長。その後、アフターコロナに向けて、新たに事業を検討するなかで、改めて「白馬」の魅力に目を向けるようになった。
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有限会社ぴー坊の宿泊施設

白馬の地域資源を生かし、宿泊業から体験型観光サービスへ

大学入学と同時に白馬を離れ、コロナ禍を機に戻ってきた大塚社長は、改めて地元の自然が持つ魅力に気付いた。
そこで、自社のビジネスモデルを宿泊施設の運営から、白馬の魅力を発信する「白馬ツーリズム」へと再定義。宿泊する場所を提供するだけでなく、その豊かな自然を生かした体験を提供することに事業の主眼を置いた。

その転機となったのが、テントサウナとの出会いである。テレビドラマ「サ道※」の制作者と偶然出会い、川でテントサウナを体験した大塚社長は、これまで感じたことがない心地良さに衝撃を受けた。
 
「この体験を多くの人に伝えたい」。
 
その想いからサウナについて学び、利用者の目線に立って、ロウリュウや水風呂の動線、休憩スペースなどを考え抜いた。こうして、大塚社長が追求した理想と白馬の自然が融合したプライベートサウナが誕生した。

この経験を通じて、大塚社長は「白馬」の自然そのものが、他の地域にはない事業の価値になり得ることに気付いた。さらに翌年には、白馬村初となるドーム型テントを用いたグランピングサービスを開始。宿泊施設を運営する事業から、白馬の自然を生かした体験価値を提供する事業へと、新たな展開を進めていった。
※『サ道』はサウナを題材とするテレビドラマである。
プライベートサウナと大塚社長

新たなバーベキューサービスの構想と経営課題

白馬の自然を生かした体験型サービスを展開するなか、大塚社長が次に取り組んだのが「夏場の集客」である。
大塚社長がイメージする顧客は、首都圏のファミリー層。都会で暮らす人たちに、白馬の夏を楽しんでもらい、家族の思い出となる体験を提供したいと考えた。

そのため、家族そろって楽しむ一つの共同体験として食事を位置づけ、地元食材や特産品にこだわったバーベキューサービスを構想した。
しかし、薪や炭火を使ったバーベキューは、初心者にとって着火や火力調整等が難しく、小さな子どもを連れた家族には安全面の課題もある。

そこで大塚社長は、初めてのアウトドアでも安全かつ手軽に楽しめるバーベキューサービスを実現するため、ガスグリル導入を検討した。
このサービス導入の是非を決断するにあたり、ある地元の人物が浮かんだ。それが、白馬商工会の竹川支援員だった。
大塚社長は、何か思いつくたびに竹川支援員に相談していた。竹川支援員は、経営相談に限らず、日頃から大塚社長の話に親身になって耳を傾けていた。
竹川支援員は、大塚社長からこの新サービスを聞いた際、新たな集客手段になり得ると考え、これまでのスキーを中心としたアウトドアから、白馬と食を同時に体感できる新サービスとして打ち出すことを助言した。

施設内には畑があり、そこで取れた野菜もある。大塚社長は、こうした地域資源も活用し、ガスグリルを使った食事プランとして食材と調理器具を提供することで、初心者や家族連れでもアウトドアを手軽に楽しめる新たな体験型サービスを構想した。
野菜収穫が可能である施設内にある畑
竹川支援員は、この構想を具体化するための手段として小規模事業者持続化補助金の活用を提案し、大塚社長との対話を重ねながら、販路拡大に向けた取り組みを整理し、申請を支援した。

補助事業の成果と今後の展望

補助金を活用してガスグリルを導入したことで、火おこしや安全確認などにかかるスタッフの作業負担が軽減された。
その結果、グランピングやサウナなどの運営に充てる時間を確保できるようになり、生まれた時間を活用して、ホームページやSNSによる情報発信にも取り組めるようになった。
こうした取り組みにより売上高の増加につながったほか、食事のバリエーションも広がり、利用客からも好評を得ている。
持続化補助金を活用して導入した「ガスグリル」
現在、大塚社長は、サウナ付きグランピング施設「From P」を展開している。「ぴー坊」という社名は父の愛称に由来し、大塚社長はそこにスキージャンプ競技で使われる飛距離の標準点「P点」の意味も重ね、「From P」の名称でブランディングしている。

コロナ禍での事業承継を機に新たな収入源を模索し、白馬の地域資源を生かした体験型サービスへと事業を展開してきた大塚社長。その過程では、白馬商工会との対話を通じて新たなサービスの構想を具体化し、持続化補助金を活用して販路拡大に向けた取り組みを進めてきた。

白馬の自然や食といった地域資源を新たな価値へとつなげ、顧客に届けていく。
大塚社長の挑戦は、これからも続いていく。
活用した補助金:小規模事業者持続化補助金
年度:2023年度 第13回
 枠・型:一般型

※本ページに掲載している補助金活用事例は過去の補助制度によるものであり、現在の補助制度とは異なる場合があります。最新の補助要件については、必ず公式情報をご確認ください。

企業データ

設立
1986年11月
従業員数
4名
代表者
大塚 栄青 氏
所在地
長野県北安曇郡白馬村北城瑞穂3020-45

支援機関データ

支援機関名
白馬商工会
所在地
長野県北安曇郡白馬村大字北城7078

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