マンガでわかる「価格転嫁」

原材料費やエネルギー価格、人件費などが上昇し、「売上はあるのに、以前より利益が残らない」と感じていませんか。
こうしたコストの上昇分を商品やサービスの価格に適切に反映することを「価格転嫁(かかくてんか)」といいます。
価格転嫁は、製造業、小売業、飲食業、建設業、運送業、サービス業など、さまざまな業種に関わる取組です。
事業を継続し、商品(製品)やサービスの品質を維持し、従業員の賃上げなどにつなげていくためには、コストの変化を把握し、必要な利益を確保できるように価格を見直していくことが欠かせません。
本記事では、原価や利益を把握し、自社の商品・サービスの価格をどのように見直すかを紹介します。

1.商品・サービスごとの利益を確認する

会社全体では利益が出ていても、商品(製品)・サービスごとに見ると、利益がほとんど残らないものや、赤字のものがあるかもしれません。また、売上の大きい取引先との取引でも、小口配送や急な依頼、度重なる修正などによって、予想以上に費用がかかっている場合があります。
まずは、製造業なら製品ごと、飲食店ならメニューごと、建設業なら工事・現場ごと、運送業なら配送業務・荷主ごと、サービス業ならサービス・案件ごとに、売上と費用(原価)を整理してみましょう。
同じ商品やサービスでも取引条件が異なる場合は取引先別に、複数の部門がある場合は部門別に確認すると、価格や仕事の進め方を見直すべきところが見えてきます。

2.原価には、共通してかかる費用も含める

原価というと、材料費や商品の仕入代を思い浮かべがちです。しかし、商品を仕入れたり、つくって販売したり、サービスを提供したりするには、人件費、外注費、家賃、光熱費、設備費、配送費などもかかります。
価格を検討するときは、材料費などの直接かかる費用に加え、販売や管理にかかる費用も含めて考えましょう。これらを合わせた費用を「総原価」といいます。
商品・案件ごとに分かる費用は、それぞれに計上します。一方、家賃など複数の商品・サービスに共通する費用は、売上高や作業時間など、適切な基準で振り分けます。この振り分けを「原価配賦(げんかはいふ)」といいます。
業種 確認したい費用の例
製造業 材料費、作業時間に応じた人件費、設備の稼働費用、電気代
建設業 現場ごとの材料費、人件費、機材費、共通経費
卸売・小売業 仕入代、物流費、店舗の家賃・人件費
飲食業 食材費、仕込み・調理・接客の人件費、家賃、光熱費
サービス業 材料・消耗品費、作業・準備・移動にかかる人件費
運輸・物流業 燃料費、車両費、待機・荷役の人件費、保管費
IT・広告業など 打合せ・制作・修正にかかる人件費、外注費、ソフト利用料
最初から厳密に計算する必要はありません。
まずは決算書(損益計算書・製造原価報告書等)のデータと、売上・作業時間などの記録を使い、商品・サービス別、取引先別、部門別の、おおよその収支をつかむことから始めましょう。
中小企業基盤整備機構は、価格や利益の検討に役立つ無料のツールを公開しています。
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3.見積りと価格の決め方を見直す

商品・サービスごとの、おおよその収支が分かったら、必要な利益を確保できる価格について検討しましょう。「昔からこの価格だから」「競合他社もこのくらいだから」といった理由だけで決めず、かかる費用を確認することが大切です。
見積りの計算方法が担当者によって違うと、費用の計上漏れや利益のばらつきが生じます。標準単価表、見積書のひな型などを用意し、原価や取引条件が変わったときには更新しましょう。
例えば、ホームページ制作会社ならば修正回数、運送業では荷役・待機時間、訪問サービスでは移動範囲を確認します。小売店や飲食店でも、包装、配達、追加メニューなどを基本料金に含めるか、別料金にするかを決めておきます。

見積りで確認したいこと

  • 材料費、外注費、人件費、共通費、必要な利益を含めているか
  • 数量、納期、納品場所、支払条件など、計算の前提は明確か
  • 準備、移動、配送、設置、修正などの費用を見落としていないか
  • 基本料金に含む範囲と、追加料金が発生する条件は明確か
  • 見積りの有効期限や、仕様・数量が変わった場合の扱いは明確か

4.自社に合った価格改定の方法を検討する

原価と必要な利益が分かったら、「何を」「いくら」「いつから」改定するかを決めます。
すべての商品やサービスを一律に値上げする必要はありません。自社の状況に合った価格転嫁の方法を検討しましょう。
価格転嫁の方法 進め方の例
対象を絞って値上げする 原材料の値上がりが大きい商品や、手間に対して利益の少ないメニューから改定する
追加作業を有料にする 特急対応、追加修正、配達、包装などの条件と料金を明示する
料金プランを分ける 基本プランと、対応範囲や付加価値を広げた上位プランを設ける
割引や無料対応を見直す 採算が合わない一律割引を整理し、数量・利用条件に応じた仕組みにする
段階的に改定する 改定時期と金額をあらかじめ決め、段階ごとの採算を確認しながら実施する

企業との取引(BtoB)の場合

企業間取引では、説明資料(根拠資料)を用意し、価格改定の必要性について取引先と話し合う「価格交渉」が必要になる場合があります。
価格交渉の進め方は、「マンガでわかる『価格交渉』」で説明していますので、そちらをご覧ください。

一般消費者との取引(BtoC)の場合

小売業、飲食業、サービス業などでは、原価や必要な利益だけでなく、顧客が感じる価値、競合他社の商品・サービスの価格、販売数量への影響なども考慮して価格を検討します。
例えば、飲食店であれば、集客につながる定番メニューの価格は据え置き、材料費の上昇が大きいメニューを改定する、理美容業ならば基本メニューと追加施術の料金を整理する、小売業なら包装や配達のサービス条件を見直す、といった方法も考えられます。

5.価格転嫁について、専門家に相談しよう

価格転嫁を「稼ぐ力」の向上につなげるためには、経営改善も含めて考える必要があります。
全国47都道府県に設置されているよろず支援拠点の「価格転嫁サポート窓口」では、価格転嫁の基本、原価の把握、価格の検討、経営改善などについて幅広く相談できます。相談は何度でも無料です。ぜひご活用ください。
よろず支援拠点(支援拠点一覧)
https://yorozu.smrj.go.jp/base/
原著作物:中小企業基盤整備機構
掲載日:2026年10月19日

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