マンガでわかる「価格交渉」

原材料価格やエネルギーコスト、人件費などが上昇するなかで、コストの増加分を商品やサービスの価格に適切に反映する「価格転嫁」の重要性が高まっています。
企業間取引(B to B)では、自社に必要な価格を検討したうえで、その価格について取引先(発注者)と話し合う「価格交渉」が必要になる場合があります。
しかし、「値上げをお願いすると、取引を減らされるのではないか」「値上げの根拠をどう説明すればよいか分からない」と不安を感じる事業者も少なくありません。
本記事では、検討した価格について、企業間取引(BtoB)の取引先とどのように話し合うかを紹介します。
なお、商品・サービスごとの原価や利益を把握し、「いくらに価格を見直すべきか」を検討する方法については、「マンガでわかる『価格転嫁』」で紹介しています。

1.価格交渉のための事前準備

企業間取引では、受注者よりも発注者の方が取引上優位な立場になる場合があります。
価格交渉では、事前に十分な準備を行い、取引先(発注者)に価格改定が必要な理由を分かりやすく説明することが大切です。

取引先との関係を整理する

取引先との関係性では、取引状況を一覧化し、取引先への依存度、契約更新の時期などを確認して、交渉の優先順位を整理します。売上だけでなく、利益率、取引依存度、関係性、将来性などから総合的に判断します。
売上が大きい取引先であっても、利益がほとんど残らない場合もあります。売上だけでなく、利益や将来性まで含めて判断することが大切です。

項目 確認する内容
取引の重要度 売上、利益率、継続性、将来性
関係性 信頼関係、相談のしやすさ
交渉のしやすさ 過去の値上げ実績、契約更新の時期
リスク 取引への依存度、値上げを断られた場合の影響
優先順位 先に交渉する取引先、後から交渉する取引先

自社の強みを整理する

自社の強みの整理にあたっては、自社が取引先にどのような価値を提供しているのかを整理し、価格の根拠として説明できるようにします。たとえば、品質の安定、短納期対応、小ロット対応、技術力などの強みが取引先にとってどのようなメリットになっているかを言語化することが重要です。

自社の強み 取引先(顧客)にとっての価値
品質が安定している クレーム・手戻りが少ない
短納期に対応できる 急な需要にも対応できる
小ロットに対応できる 在庫リスクを減らせる
専門的な技術がある 他社では対応しにくい案件を任せられる
相談への対応が早い 発注側の業務負担を減らせる

価格交渉のための根拠資料を作成する

価格交渉では、「コストが上がったので値上げしたい」と伝えるだけでなく、客観的な資料を示すことが大切です。労務費転嫁指針等でも、価格交渉には公表資料を用いることが推奨されています。
なお、原材料価格の推移などの資料を収集するのに便利なツールとして、埼玉県の「価格交渉支援ツール」があります。ぜひご活用ください。
費目 根拠となるデータの例
労務費 最低賃金、賃上げ率、賃金指数
原材料費 仕入価格、企業物価指数、業界資料
燃料費 軽油・ガソリン価格、原油価格
電力費 電気料金単価、契約単価
外注費 外注先の単価改定状況
価格交渉支援ツール(埼玉県)
表計算ソフトを使用し、主要な原材料価格(1,422品目)の推移を示す資料を簡易に作成できる。
業種別の労務費データも分析可能。
https://www.pref.saitama.lg.jp/a0801/library-info/kakakukoushoutool.html

交渉方針を決める

「マンガでわかる『価格転嫁』」で検討した価格をもとに、取引先ごとの交渉方針を整理します。
取引先に提示する価格や、どこまで調整できるか、希望する価格で合意できなかった場合に価格以外の取引条件を見直せるかなどを、あらかじめ検討しておきましょう。
また、取引先との関係性や契約更新の時期などを踏まえ、交渉する順番や時期についても検討します。

【検討する内容】
  • 取引先に提示する価格
  • 調整できる範囲
  • 交渉する時期・順番
  • 価格以外に見直せる取引条件
  • 交渉がまとまらなかった場合の対応

2.価格交渉の進め方

価格交渉を申し入れる

「価格改定検討のお願い」などのタイトルで文書を作成し、送付します。この文書には、価格改定が必要となった背景についても記載します。
また、取引先の担当者には、あらかじめ価格改定の意向を伝え、価格について協議する場を設定してもらうよう依頼します。

根拠を示して価格・取引条件について話し合う

事前に準備した根拠資料を示しながら、価格改定が必要な理由を説明し、価格について交渉を行います。
価格交渉は、一方的に値上げを求めるだけではありません。
取引先から、「その金額では難しい」、「値上げ幅をもう少し抑えられないか」、「改定時期を変更できないか」といった意見が出る場合もあります。
相手の事情や意見も確認しながら、双方が継続して取引できる条件を検討しましょう。
希望する価格での合意が難しい場合には、価格以外の取引条件を見直す方法もあります。
例えば、
  • 加工方法や原材料、設計の変更
  • 包装方法や納品頻度の変更
  • 検査方法の見直し・変更
  • 支払条件や保証期間の見直し
  • サービス体制の変更
  • 不稼働金型の管理費や廃棄ルールの設定
などが考えられます。

議事録などによる文書化

価格交渉の経緯については、その都度、「決まったこと」と「決まっていないこと」を文書化しておきましょう。
議事録の作成・共有が難しい場合には、打合せメモとして、「認識に相違がないよう、確認させてください」などと記した電子メールを取引先に送信し、交渉内容を記録として残しておくことも有効です。
 
価格や取引条件について合意した場合には、改定後の価格、改定時期、数量、納期、その他の条件について、双方の認識に違いが生じないよう書面で確認しておきましょう。
 
中小企業庁の「価格交渉ハンドブック」には、価格交渉にあたって準備する資料や交渉時のポイント、支援ツールなどが一冊にまとめられています。ぜひ参考にしてください。
中小企業・小規模事業者の価格交渉ハンドブック(中小企業庁)
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/pamflet/kakaku_kosho_handbook.pdf

3.価格交渉を支援する法律や制度

価格交渉を適切に進めるために、知っておきたい法律や指針、支援制度があります。価格交渉を行う際に参考となる主な制度や相談窓口をご紹介します。

中小受託取引適正化法(取適法)

2026年1月、「中小受託取引適正化法(取適法)」が施行されました。取適法では、資本金基準に加え、従業員基準が設けられ、従来の下請法と比べて適用対象が広がりました。
また、中小受託事業者(受注者・下請事業者)から価格について協議を求められたにもかかわらず、委託事業者(発注者・親事業者)が協議に応じなかったり、必要な説明を行わなかったりするなど、「協議に応じない一方的な代金決定」が禁止されています。価格交渉のプロセスが重視されているのが今回の改正の大きな特徴です。
中小受託取引適正化法(取適法)
https://www.jftc.go.jp/partnership_package/toritekihou.html

労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針

労務費転嫁指針は、人件費の上昇分を適切に価格に反映し、賃上げにつなげるための基本的な考え方を示したものです。取適法と異なり、企業の規模や業種を問わず、発注者と受注者の双方を対象としています。
労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針
https://www.jftc.go.jp/dk/guideline/unyoukijun/romuhitenka.html

パートナーシップ構築宣言

「パートナーシップ構築宣言」は、取引先との共存共栄や適正な取引を宣言する制度です。ポータルサイトで、取引先の「パートナーシップ構築宣言」を確認することで、取引先の価格転嫁・価格交渉の方針を知ることができます。
パートナーシップ構築宣言ポータルサイト
https://www.biz-partnership.jp/
 

「取引適正化」と「付加価値向上」に向けた自主行動計画

自動車、機械、建設、流通、飲食などの業界団体が、適正な取引に向けて自主的に定めた行動方針です。自社が属する業界で推奨されている価格交渉の進め方や取引ルールを知ることができます。
「取引適正化」と「付加価値向上」に向けた自主行動計画
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/koudoukeikaku.html

受託適正取引等推進のためのガイドライン

 国が定めた、業種ごとの取引の特徴を踏まえたガイドラインです。望ましい取引方法のほか、取適法などに違反するおそれのある取引事例が具体的に示されています。
受託適正取引等推進のためのガイドライン
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/guideline.html

価格転嫁サポート窓口(よろず支援拠点)

価格改定に向けた準備や価格交渉の進め方などについて専門家に相談できます。無料で何度でも相談可能です。
よろず支援拠点(支援拠点一覧)
https://yorozu.smrj.go.jp/base/

取引かけこみ寺

「取引かけこみ寺」は、事業者間の取引の悩みを相談できる窓口です。専門の相談員や弁護士が、秘密を守って相談に応じます。相談したこと自体も秘密として扱われます。相談は無料で、対面・電話・オンラインで受け付けています。
原著作物:中小企業基盤整備機構
掲載日:2026年10月19日

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