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マンガでわかる「価格交渉」
急速な円安が進むなか、原油などのエネルギーコストや原材料価格は高騰しています。また、最低賃金の引上げや人手不足などにより、労務費も上昇傾向にあります。
こうしたなかで、コストの上昇分を取引価格に適切に転嫁するためには、「価格交渉」が欠かせません。
令和8年1月1日に施行された「中小受託取引適正化法(取適法)」では、「協議に応じない一方的な代金決定」が禁止されています。中小受託事業者(下請事業者)から価格協議の求めがあったにもかかわらず、委託事業者(親事業者)が協議に応じなかったり、必要な説明を行わなかったりするなど、一方的に代金を決定する行為は禁止されています。
今回の「マンガでわかる」シリーズでは、売り手である「中小受託事業者」が、買い手である「委託事業者」と価格交渉を行うためのテクニックやポイントについてご紹介します。
「価格転嫁」のための価格交渉の進め方
多くの取引では、売り手よりも買い手の方が取引上優位な立場になることがあります。そのため、中小受託事業者(下請事業者)と委託事業者(親事業者)が価格交渉を行う場合、中小受託事業者は不利な立場に置かれがちです。
では、中小受託事業者は、どのように価格交渉を進めていけばよいのでしょうか。ここでは、その基本的な流れについてご説明します。
STEP 1「事前準備」
■価格根拠の資料を作成
「労務費転嫁指針」は、発注者と受注者が採るべき行動・求められる行動を定めたものです。
指針では、価格交渉の根拠資料として、最低賃金の上昇率などの公表資料を用いることを、発注者と受注者の双方に求めています。
原材料費・エネルギーコスト・労務費について、公表資料を中心とした客観的な根拠資料を作成して、交渉に臨みましょう。
- 原材料の内訳と、それぞれの原材料価格の推移(上昇)を示す客観的な資料
- 電気料金・ガス料金・燃料調達費など、エネルギーコストの推移(上昇)を示す客観的な資料
- 最低賃金の引上げや人手不足などによる、労務費の上昇を示す資料
- 外的なコスト増加に対して、自社が企業努力で対応できる範囲や、これまで実施してきた企業努力を示す資料
- 価格改定が安定供給や品質の維持・向上にどのようにつながるかを説明する資料
■委託事業者(親事業者)との関係性の確認
委託事業者(親事業者)が、自社にとってどの程度重要な取引先なのかによっても、価格交渉の条件は異なる場合があります。以下について確認しておきましょう。
- 委託事業者との取引が、自社全体の売上・利益に占める割合や依存度
- 委託事業者との取引に、取適法が適用されるかどうか
- 委託事業者が、自社の経営状況(決算書等)を把握しているかどうか
■競合に対する自社の強みの把握
競合(同業他社)と比較した場合の自社の強みを整理しましょう。
重要なのは、取引先の視点から、自社にはどのような強みがあり、どのような価値を提供しているのかを整理し、それを価格の根拠として説明できるようにすることです。
- 競合と比べて、価格は安いのか、高いのか
- 競合と比べて、製品・サービスの品質はどうか
- 競合と比べて、納期対応力・生産能力はどうか
- 競合と比べて、製品の機能や技術力は優れているか
■提示価格・目標価格・最低価格等の設定
価格交渉にあたっては、取引先に提示する「提示価格」、自社として納得できる「目標価格」、これ以上は譲歩できない「最低価格」の3つを設定しておきます。
「提示価格=目標価格」でもかまいませんが、取引先によっては、交渉の余地を考慮して、目標価格よりも高い提示価格を設定しておく方法もあります。
また、価格以外についても、自社で受け入れることができる取引条件を整理しておきましょう。
STEP 2「価格交渉」
■価格交渉の要請
「価格改定検討のお願い」などのタイトルで文書を作成し、送付します。この文書には、価格改定が必要となった背景についても記載します。
また、取引先の担当者には、あらかじめ価格改定の意向を伝え、価格について協議する場を設定してもらうよう依頼します。
■価格・取引条件の交渉
事前に準備した客観的かつ合理的なデータを提示しながら、価格交渉を行います。
交渉の方法としては、まず「提示価格」を提示し、相手の反応を見ながら「目標価格」での妥結を目指します。
また、必要に応じて、価格以外の対案や取引条件を提示することも有効です。例えば、以下のようなものが考えられます。
- 加工方法や原材料、設計の変更
- 包装方法や納品頻度の変更
- 検査方法の見直し・変更
- 支払条件や保証期間の見直し
- サービス体制の変更
- 不稼働金型の管理費や廃棄ルールの設定
STEP 3「価格・取引条件の文書化」
■議事録などによる文書化
価格交渉の経緯については、その都度、「決まったこと」と「決まっていないこと」を文書化しておきましょう。
議事録の作成・共有が難しい場合には、打合せメモとして、「認識に相違があるとご迷惑をおかけするため、確認させてください」などと記載した電子メールを取引先に送信し、交渉内容を記録として残しておくことも有効です。
■取引条件・ルールの文書化
合意した取引条件やルールについては、議事録・見積書・契約書などで文書化しておきましょう。
取引条件に関するルールとしては、例えば以下のようなものがあります。
- 製品単価の算出ルール
- 追加費用の負担ルール
- 型の保管・廃棄ルール
- 補給品の支給条件・単価算出ルール
- 運送経費の算出ルール
- 図面・ノウハウの開示ルール
「値下げ要請」に対する価格交渉の進め方
委託事業者(親事業者)からの「値下げ要請」に対する交渉方法の基本的な考え方は、委託事業者への「値上げ要請」の場合と同じです。ただし、いくつか注意すべきポイントがあります。
STEP 1「事前準備」
値下げ要請を受けた場合に重要なのは、「その場で即答しない」ことです。
委託事業者から、一方的な値下げ要請について即答を迫られたり、短期間で返答を求められたりする場合もありますが、すぐには回答せず、検討する時間をもらうようにします。
そして、「値上げ要請」の場合と同じように、製造等にかかる原材料費、エネルギーコスト、労務費など、合理的な価格の根拠となる資料を作成します。
また、委託事業者が求める品質水準を達成するために必要なコスト、原価計算の方法、自社がこれまで行ってきたコスト低減努力などについても資料を作成しておきます。
さらに、「値上げ要請」の場合と同様に、委託事業者との関係性や、競合に対する自社の強みについても把握しておきましょう。
そのうえで、値下げ要請に対して、自社として納得できる「目標価格」と、これ以上は譲歩できない「最低価格」を設定します。価格を検討する際には、損益分岐点や限界利益についても算出しておくことが重要です。
STEP 2「価格交渉」
値下げ要請に関する価格交渉では、「価格を低減するために、委託事業者(親事業者)と共同で何ができるか」を一緒に考える姿勢で臨みましょう。
その前提として、委託事業者が求める品質水準を達成するために必要な工数、技術的な難易度、知的財産の対価などについて説明し、「目に見えるコスト(数値化しやすいコスト)」以外にも必要なコストがあることについて理解を求めます。
また、「値上げ要請」の場合と同じように、必要に応じて価格以外の対案や取引条件を提示することも大切です。
STEP 3「価格・取引条件の文書化」
「値上げ要請」の場合と同じように、議事録などによって交渉の経緯を文書化するとともに、合意した取引条件やルールを書面に残し、後々のトラブルを防ぎましょう。
価格交渉の前に「取適法」「労務費転嫁指針」を確認しよう
委託事業者(親事業者)と価格交渉を行うにあたっては、「中小受託取引適正化法(取適法)」について学び、その内容を理解しておきましょう。
取適法では、資本金基準に加えて「従業員基準」が追加され、従来の下請法と比べて適用対象が広がりました。また、「協議に応じない一方的な代金決定」や「手形払」等が禁止されています。
また、取適法の施行に合わせて、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針(労務費転嫁指針)」も改正されました。
労務費転嫁指針は、業種・事業規模を問わず、発注者・受注者の双方を対象とするものであり、労務費の適切な転嫁に向けて、発注者と受注者が採るべき行動・求められる行動を「12の行動指針」としてまとめています。
企業間の「適正な取引」のために
中小企業・小規模事業者をはじめ、企業間の適正な取引に役立つ情報をまとめました。ぜひ参考にしてください。
●中小企業・小規模事業者の価格交渉ハンドブック
価格交渉の準備資料や交渉のポイントなどを網羅的にまとめたハンドブックです。価格交渉や価格転嫁に関する各種支援ツールも紹介しています。
●受託適正取引等推進のためのガイドライン(中小企業庁)
発注企業と受注企業との間で適正な取引が行われるよう、国が策定したガイドラインです。望ましい取引事例や、問題となり得る取引事例について分かりやすく解説しています。
●取引かけこみ寺(全国中小企業振興機関協会)
国が取引上のトラブルの解決を支援するため、各都道府県に設置している無料の相談窓口です。
代金の未払い・減額、不当なやり直し・返品、受領拒否、買いたたきなどの取引上のトラブル解決に向けて、専門の相談員や弁護士がアドバイスします。
中小企業はもちろん、個人事業主やフリーランスの方も相談できます。
●パートナーシップ構築宣言
パートナーシップ構築宣言とは、規模の大小にかかわらず、事業者が「発注者」の立場で自社の取引方針を宣言する取組です。
企業は代表者の名前で、「サプライチェーン全体の共存共栄と新たな連携(オープンイノベーション、IT実装、グリーン化等)」や「振興基準の遵守」などに重点的に取り組むことを宣言します。
宣言企業は、パートナーシップ構築宣言の「ロゴマーク」を使用できるほか、一部の補助金で加点措置を受けることができます。
価格交渉にあたっては、委託事業者(親事業者)がパートナーシップ構築宣言をしているかをポータルサイトで確認し、委託事業者の取引方針について確認しておきましょう。
●価格転嫁検討ツール(中小機構)
コスト高騰を受けて価格転嫁を検討する中小企業・小規模事業者の皆さまに向けて、商品別の収支状況や目指すべき取引価格を試算できるツールです。
登録不要・無料で利用でき、コスト構造や価格転嫁の必要性を「見える化」できます。
●儲かる経営キヅク君(中小機構)
商品・取引先ごとの収支状況やコスト構造の変化を可視化し、将来、目標とする利益を確保するために必要な売上高や、改善すべきコストの優先順位を明確にすることで、価格転嫁の目安や商品戦略、事業戦略などを検討できるツールです。
登録不要・無料で、パソコン(PC)から利用できます。
原著作物:中小企業庁(ミラサポplus)
情報更新:中小企業基盤整備機構
最終更新日:2026年9月1日
情報更新:中小企業基盤整備機構
最終更新日:2026年9月1日




