公開日:2026年03月26日

  • サービス業
  • 省力化投資補助金

地域支援機関とともに生産性向上に取り組む企業事例(豊田石油株式会社)

サービスと効率の理想的な両立へ—豊田石油株式会社のデジタル活用による成功事例—

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豊田石油株式会社 代表取締役 舟橋正美 氏

この記事のポイント

  • 人手不足とサービス品質低下という二重課題への対応
  • 中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)を活用した省力化投資の実践
  • 生産性向上と働きがい創出による経営改善効果
愛知県豊田市を中心に、70年以上にわたり地域に根ざしたエネルギー供給を担ってきた豊田石油株式会社。同社は最新のデジタル技術を導入することで、深刻化する人手不足への対応とサービス品質の向上を同時に実現することを目指している。
今回、同社が活用したのは「中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)」。導入した「タブレット型給油許可システム」が、それまでの課題をどのように解決し、ガソリンスタンドの現場をどのように変えたのか。同社の戦略とその具体的な効果を紹介する。

地域に根ざし、「サービス」を追求し続ける豊田石油

取材中の代表取締役 舟橋正美 氏
取材中の代表取締役 舟橋正美 氏
豊田石油株式会社は、豊田市日之出町に本社を置き、同市内に4つの直営店舗を構えるほか、同市や大府市に7つのグループ販売店を展開する、地域密着型のガソリンスタンド運営企業である。同社の行動指針の核となっているのは、社是である「サービスに徹する」という言葉だ。
 
「常にお客様に便利さと愛されるものを提供せよ」という社訓に基づき、同社は単なる燃料供給にとどまらず、真心のこもったサービスの提供を追求してきた。
しかし、こうした「手厚いサービス」を維持していく上で、近年、大きな壁が立ちはだかっていた。
 

人手不足と給油許可業務がもたらす現場の非効率

同社が直面していた最大の課題は、セルフ式ガソリンスタンドで現場を支える「人材」の確保と業務の効率化であった。同社で唯一のセルフ式ガソリンスタンドであるDr.DriveセルフFASもとまち店(豊田市土橋町1丁目60番地)では、次のような具体的課題が顕在化していたと舟橋社長は語る。
 
「セルフ式ガソリンスタンドでは、お客様自身の判断で給油が出来ると誤解している人が多い。あまり知られていないが、消防法の規定により、当社の従業員が給油許可スイッチを押さない限りは給油ができない。
火災の原因となるたばこを吸いながらの給油や、油種を間違えて給油する客がいるためである。
そのため、1名の従業員をガソリンスタンド建物内の固定場所で、モニターを監視しながら、給油許可のスイッチを押すために常駐させる必要があった。ガソリンスタンド敷地内にも別途2名の従業員を配置していたが、そもそも人手不足で求人募集をしても応募が少なく、人員の確保が困難な状況であった。さらに、従業員が体調不良等で休んだ場合には、敷地内で車の誘導をしながら、給油許可スイッチを押すために建物内に戻る必要があるなど、非効率な店舗運営を余儀なくされていた」
建物内の「給油許可指示室」の様子。導入前は従業員が常駐する必要があり、
場合によってはスタンド敷地内から戻る対応も求められるなど、非効率だった。
社是である「サービスに徹する」に反することも課題だった。
「建物内の給油許可システムへの入力作業や確認作業に追われることで、当社が大切にしているお客様へのプラスアルファの声掛けや車両の異常チェックなど、付加価値の高いサービスに充てる時間が削られていた」と舟橋社長は当時を振り返る。
 
環境方針に掲げる「業務の効率化による環境改善活動」を推進するためにも、アナログ作業から脱却し、より少ないリソースで高いパフォーマンスを発揮できる体制の構築が急務であった。

タブレット型給油許可システムの選定と「省力化投資補助金」の活用

現場での課題を解決するため、同社が注目したのが「中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)」である。これまで、愛知県石油商業組合を通じて、地下埋設タンク工事などで補助金を活用した経験はあったものの、他の補助金は一度も活用したことがなかった。
 
「補助金の申請にあたって、業界向けの補助制度であれば自社の課題は説明しやすいが、業界外の方々に課題を理解してもらうように説明することは大変だった。しかし、自社の課題を言語化するためには得難い経験だった」と舟橋社長は前向きに語る。
 
同社がカタログ内から選んだのは「タブレット型給油許可システム」である。このシステムは、従業員が給油機のそばに立ちながら、手元のタブレット一台で給油許可を完結させ、給油機を遠隔で制御できる仕組みであり、同社唯一のセルフ式ガソリンスタンドの課題解決につながると判断し、導入を決めた。
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タブレット型給油許可システム

導入後の具体的効果—生産性の向上と「働き甲斐のある」職場—

「タブレット型給油許可システム」の導入により、給油許可のために敷地内から建物内への度重なる移動も不要となり、業務の効率化が実現すると同時に、従業員の体力的負担の軽減にもつながった。
従業員1名をガソリンスタンド建物内の固定場所で、給油許可のスイッチを押すためだけに常駐させる必要もなくなった。これまで室内作業をしていた従業員も敷地内での顧客対応業務を担うことが出来るため、人手不足の緩和にもつながった。
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タブレット型給油許可システムを使用し、給油許可を出す様子
当初は全く想定していなかった効果も生じたと、舟橋社長は笑顔で語る。
「効率化が図られたことで、従業員に心の余裕が生まれた。社訓にある「常にお客様に便利さと愛されるものを提供せよ」という精神に基づき、お客様との会話が増え、オイル交換や洗車を勧めることが可能となった。さらに、「タブレット型給油許可システム」導入前はENEOSアプリ(※1)を勧める余裕がなく、登録者はほぼ皆無であったが、導入後は毎月100件~200件もアプリの登録者が増えた。お客様の囲い込みが実現した結果、来所者は大きく増加し、オイル交換等の附帯サービスも増加した。給油許可システム導入店単体の収益は2~3割増となり、従業員の働き甲斐にも直結している」
(※1)ワンタッチ決済やポイント付与、値引きクーポンの発行、メンテナンス予約受付、顧客への情報提供など各種サービスを一元的に行うアプリ
 
さらに、このセルフ式ガソリンスタンドでは、従業員に未経験者の割合も高く、建物内の給油許可システムのモニターを確認しながら行う一連の接客フローの習得には、これまで1週間以上を要していた。操作が容易なタブレット型給油許可システム導入後は、未経験者でも2~3日程度で即戦力になるという。人材教育の負担軽減という面でも効率化を図ることが出来た。同社が掲げる「人に優しいサービス」を実現するためには、まず「働く従業員にとっても優しい環境」であるべきだという考えを具現化した形である。

未来への展望—デジタルとホスピタリティの融合—

補助金を活用して導入したこのシステムを、単なる「機械化」ではなく、スタッフがより誇りを持って、お客様に寄り添える環境を作るための「道具」として活用している。
タブレット型給油許可システムの導入成功例は、伝統的なロードサイドビジネスがデジタルトランスフォーメーション(DX)をどう進めるべきか、一つの指針を示すものといえる。
Dr.DriveセルフFASもとまち店(豊田市土橋町1丁目60番地)
 同社はこれからも、環境への配慮(SDGs)を考慮した活動を推進しつつ、信和、創造、努力という社訓のもと、地域の皆さまに愛されるガソリンスタンドであり続けることを目指している。
テクノロジーを活用した「サービスに徹する」精神は、今後も豊田の街を走る人々を支える存在となっていくことだろう。
活用した補助金:中小企業省力化投資補助金
年度:公募回 8次
 枠・型:カタログ注文型

※本ページに掲載している補助金活用事例は過去の補助制度によるものであり、現在の補助制度とは異なる場合があります。最新の補助要件については、必ず公式情報をご確認ください。

企業データ

設立
1952年4月

従業員数
25名
代表者
舟橋 正美 氏
所在地
愛知県豊田市日之出町1丁目9番地1

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