公開日:2026年03月24日
- 製造業
- 省力化投資補助金
地域支援機関とともに生産性向上に取り組む企業事例(株式会社フリーザーシステム)
人手不足に直面した「二丈温泉きららの湯」が選んだ省力化投資
この記事のポイント
- 人手不足を乗り越えるために省力化投資を決断
- 券売機導入で残業削減と業務効率化を実現
- データ活用で経営改善と働きやすい環境づくりへ
株式会社フリーザーシステムの観光事業部は、福岡県糸島市で「二丈温泉きららの湯」を運営している。この施設内のレストランでは、省力化投資補助金(カタログ注文型)を活用し、「券売機(KC-TXシリーズ)」を導入した。人手不足という課題を背景に、導入前に抱えていた課題と、券売機導入後に現場にもたらされたさまざまな効果について話を聞いた。
「食品工場の総合プラントメーカー」が、温泉運営に乗り出した理由
福岡県飯塚市に本社を置く株式会社フリーザーシステムは、2001年(平成13年)に創業し、当初はプレハブ事業と冷熱事業を主軸としていた。その後、お客様からの「工場全体の設計・施工まで担ってほしい」という要望に応え、建築事業を立ち上げた。現在は「食品工場の総合プラントメーカー」として、HACCP認定工場の新築・改修など、食品の安定供給に貢献する幅広いソリューションを提供している。
同社の企業理念は「冷却・凍結技術で美味しい食材を家庭へ届け、人々の心を豊かにする」である。この「心を豊かにする」という目的を、より直接的に実現するため、2021年(令和3年)に観光事業部を開設した。その一環として、2023年(令和5年)9月に、福岡県糸島市にある「二丈温泉きららの湯」の運営を市から引き継ぎ、地域住民や観光客に親しまれる施設運営を行っている。
なお、引き継いだ際にリニューアル工事を行なったが、同社は建設事業部を有しているため、その工事を自社で賄えたことは大きな強みである。
人手不足が浮き彫りにしたレストラン運営の課題
糸島市二丈エリアは魅力的な観光地である一方、サービス業における深刻な人手不足という大きな壁に直面していた。特に、施設内のレストラン「旬菜工房 きらら庵」では、次のような具体的な課題が浮き彫りになっていたと、マネージャーの内田広信氏は語る。
「週末や連休中になると、施設内の温泉上がりの多くのお客様がレストランを訪れる。ピーク時は40席が3回転し、繁忙を極め、オーダー待ちとレジ混雑が限界に達していた。スタッフがテーブルを回り、手書きでオーダーを取り、食後にレジで会計を行うという従来のフローでは、ホールスタッフが注文取りと会計に忙殺され、お冷の提供やテーブルの片付けが後手に回っていた。施設内の事務や清掃担当から応援を頼み一時的にしのぐことはできても、今度はその部門が人手不足となる悪循環が続いていた。求人募集を出しても応募はなく、人手不足は深刻化していた」
さらに負担となっていたのが、現金管理である。「営業終了後のレジ締め作業に、時には2〜3時間も要していた。紙の伝票1枚1枚とレジの残金を突き合わせ、1円単位の誤差の確認作業はスタッフの精神的負担も大きく、本来注力すべき「おもてなし」の余裕を削いでいた」
これらの課題は、同社が目指す「お客様に一歩先を見据えた提案をする」という企業方針と照らしても、早急にデジタル技術で解決すべき課題であった。
券売機導入と補助金活用の経緯。社内議論から実行まで
活用して導入した「券売機」
このような課題を解決するため、社内で何度も議論を重ねた結果、「券売機」の導入が最適であるとの結論に至った。しかし、高機能な券売機の導入には一定のコストがかかるうえ、自社に最適な製品を選ぶ判断基準がなかった。
幸い、省力化製品販売事業者からの情報もあり、中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)を活用することを決断した。もともと、同社は「食品工場の総合プラントメーカー」として、自社が手掛けた食品メーカーに補助金活用を提案する部署もあり、補助金申請自体には抵抗はなかった。実際、省力化投資補助金(カタログ注文型)は、申請しやすかったという。
最新のツールを導入することで、接客の質を落とさずに労働時間を短縮し、事業の持続可能性を高めることが狙いであった。しかし、導入後の効果は当初の期待を遥かに超えるものであった。
省力化投資が生んだ現場改善と本社業務50%削減
「今回導入した券売機は、従業員2~3名分の働きをしている」と内田マネージャーは断言する。
注文取りと会計という2大業務が自動化されたことで、スタッフは「お客様を笑顔でお迎えする」「出来立ての料理を運ぶ」など、お客様の気持ちに寄り添いながら、余裕を持ってサービスを提供できるようになった。
閉店後の現金確認作業も数分で完了するようになり、残業時間の削減に直結した。実際、マネージャーの内田氏は、券売機導入前は月数十時間の残業を余儀なくされていたが、導入後の残業はほぼゼロになったという。
メニューにもよるが、注文から提供までの時間が5分〜10分短縮されたことで、券売機導入前は「料理の提供が遅い」と苦言を呈しつつ帰る客が見られたものの、導入後はほとんど見られなくなった。
また、写真付きの大きな画面でメニューを選べる券売機を導入したことで、高齢のお客様がメニューを選びやすくなったと好評である。
さらに、スタッフが直接現金に触れる機会が減ったことは、食品を扱うレストランとして衛生管理上の大きなメリットである。これは、同社が建設事業部で培ってきたHACCP的な視点(安全・清潔)とも合致する成果と言える。
券売機の効果はこのような店舗運営にとどまらず、当初は全く想定していなかった成果を生み出した。
「導入した券売機の優れている点は、メニューごとのデータを日々正確に把握できることである。導入前はエクセルで販売データを管理していたが、飲み物を含めたメニューが100前後もあり、手入力に時間を要し、分析にまで手が回らなかった。現在は累積したデータを基に売れ筋メニューを60前後に絞り込み、廃棄ロスの削減や食材在庫の適正化を実現している」と内田マネージャーは胸を張る。
本社とは日々の売上データをやり取りしているが、導入前は手作業によるエクセル入力ミスに起因する確認作業に時間を要していた。導入後は、本社での売上確認時間が導入前と比較して約50%削減されたという。効果は導入現場だけでなく、本社の業務時間短縮にも及んでいる。
今回の「きららの湯」での取り組みは、同社の観光事業を展開していくうえで、一つのモデルケースになるのではないかと思われる。
同社はこれまで、食品工場への設備導入を通じて「食品の安定供給」と「心の豊かさ」に貢献することを目指してきた。その中で培った技術と考え方が、観光事業という「おもてなし」の現場にも活かされている。
省力化投資補助金を活用し、券売機という一見無機質な機械を「働きやすい環境を整え、スタッフを笑顔にするツール」に変えた同社の取り組みは、人手不足に悩む多くの企業にとって大きなヒントになることだろう。
| 活用した補助金:中小企業省力化投資補助金 |
| 年度:公募回 5次 |
| 枠・型:カタログ注文型 |
※本ページに掲載している補助金活用事例は過去の補助制度によるものであり、現在の補助制度とは異なる場合があります。最新の補助要件については、必ず公式情報をご確認ください。
企業データ
- 企業名
- 株式会社フリーザーシステム
- 設立
- 2001年
- 従業員数
- 175名
- 代表者
- 松下 爾仁 氏
- 所在地
- 福岡県飯塚市有安958-5







