公開日:2026年03月17日
- サービス業
- 省力化投資補助金
地域支援機関とともに生産性向上に取り組む企業事例(新生ビルメンテナンス株式会社)
省力化投資補助金カタログ注文型を活用した病院清掃の省力化事例
この記事のポイント
- 「深刻な人手不足」と「従業員の高齢化」に直面する病院清掃現場の構造的課題
- 省力化投資補助金(カタログ注文型)の活用による清掃ロボット導入と業務効率化の推進
- 短時間かつ高品質な床清掃の実現と人的リソース最適化による生産性向上
福岡県久留米市に本社を置く新生ビルメンテナンス株式会社は、オフィスビル、商業施設、マンション、さらには高度な衛生管理が求められる医療機関まで、多種多様な建物の管理をトータルでサポートする総合ビル管理企業である。同社は2025年(令和7年)、「省力化投資補助金(カタログ注文型)」を活用し、病院清掃の現場に最新の清掃ロボット(HAPiiBOT)を導入した。
慢性的な人手不足と従業員の高齢化が深刻な影を落とすビルメンテナンス業界において、同社がいかにしてこれらの課題に向き合い、最新技術を取り入れることで「安心・安全」な環境づくりを加速させたのか。その取り組みを紹介する。
地域の発展と社員の幸せを育む、新生ビルメンテナンス株式会社
新生ビルメンテナンス株式会社は、福岡県内を中心に、清掃管理、設備保守管理、保安警備、産業廃棄物の収集運搬など、総合ビル管理業を展開している。同社は「お客様の役に立てるか」を常に問い続ける姿勢と、「感謝の心」を大切にしている。単に建物を維持するだけでなく、そこに集う人々が「安全で安心できる環境」を享受できるよう、地域に密着した誠実なサービスの提供を心がけている。
ビルメンテナンス業界が直面する「構造的な課題」
今回、清掃ロボットの導入を検討した背景には、どのような課題があったのか。染矢総務部長は次のように語った。
「業界全体が直面している「深刻な人手不足」と「従業員の高齢化」が最大の要因だった。人材募集を行っても他業種との人材獲得競争が激しいため、十分な人手が確保できない。現場で働く従業員の高齢化も急速に進み、勤続30年以上で83歳の従業員が最年長で頑張ってくれているが、この先を考えると恒常的な人手不足は避けられない状況となっていた」
特に、取引先の約3割を占める病院などの医療施設は24時間365日稼働しており、常に清潔な状態を維持しなければならならない。そのため清掃業務の重要性は極めて高い一方で、現場への人的負担も大きく、「深刻な人手不足」と「従業員の高齢化」は最優先で解決を図るべき課題であった。
病院清掃の現場の苦労は想像以上である。
「病院の清掃は、感染症対策と転倒事故の防止という2つの重大な責務がある。高齢の患者は免疫力が低下しているため、病院内での感染症対策には細心の注意が必要であり、清掃後の床に水滴が残っていれば転倒による骨折などの深刻な事故につながりかねない。人の手による清掃では、どうしても作業のムラが生じたり、広大な廊下を常に乾燥した状態に保つことが難しかったりするなど、限界を感じる局面があった。今回導入を決めた病院では、最適な人員配置であっても常に4~5名が不足している状態であり、人手不足感はとりわけ深刻だった」と平田顧問は語った。
省力化投資補助金「カタログ注文型」の活用、設備導入への決め手

課題解決のために、省力化投資補助金(カタログ注文型)を活用したきっかけは、清掃ロボット(HAPiiBOT)の製造事業者であるアマノ株式会社からの提案だった。
以前からロボット導入の関心はあったものの、初期投資の大きさや、どの機種が自社の現場に最適なのかを見極める難しさが壁となっていた。そのような中、国内メーカーであれば修理等にも迅速に対応してもらえるという安心感があったという。
創業以来、同社は省力化投資補助金「カタログ注文型」を含め、他の補助金も一切活用したことがなかった。申請書類の作成過程では、導入後の人件費推移を計算するなど慣れない作業もあり、「申請には1ヶ月程度を要したものの、当初想定していたよりは簡単だった」と染矢総務部長は笑顔で語った。
省力化投資補助金「カタログ注文型」の魅力は、あらかじめ「省力化」効果が認められた製品がカタログに掲載されており、その中から自社に合ったものを選ぶだけで、申請手続きが大幅に簡略化されている点だ。相見積もりを取得する必要もなく、信頼できる販売事業者と共同でオンライン申請が可能であるため、初めて補助金を申請する中小企業にとっても心理的な負担は低い制度である。
「病院の広大な廊下や共用部の床を自動で洗浄できる、清掃ロボット(HAPiiBOT)を導入した。このロボットは、360度センサーにより障害物を検知して回避する高い安全性を備えている。ゴミ清掃を行うロボットの導入事例はあるが、床洗浄まで行うロボットの導入は、福岡県南地区にある同業種内では当社が初めてである」と染矢総務部長は語った。
清掃ロボット導入後の具体的な効果
清掃ロボット表面のプリントシールは社内で募集し、親しみやすい外観に。 「平日は13時30分から14時30分、休日は10時から11時まで、病院各階の廊下共用箇所を1日1フロアずつで稼働している。現時点では、昨年7月からの試験稼働期間中のため、常に1名が付き添っている状態であり、まだ余力人員を生み出せる状態ではないことは事実。今後、試験稼働期間が終わり、病院側と合意が出来れば、この1名の付き添い要員の従業員をロボットが苦手とする「トイレ」や「壁ぎわ」、「段差のある箇所」といった、より困難で細やかな配慮が必要な清掃業務をお願いすることで、人的リソースの最適な再配置が実現するだろう」と平田顧問は自信に満ちた表情で語った。
人的リソースの最適化はまだ実現していないものの、効果は着実に表れている。
「400㎡から500㎡の広大な面積を実質40分程度で、一定の品質を保ちながら作業を続ける。人手で行う場合は、水拭き作業と拭き上げ作業の2工程が必要であり、それぞれ約50分および約40分を要するため、結果として約2倍の時間がかかっていた。特筆すべきは、吸引機能によって床面を乾いた状態で仕上げる点である。人がモップで作業を行う場合と比べ、清掃直後の床での滑りによる転倒リスクが大幅に軽減された。清掃ロボット導入により、清掃のムラが無くなり、仕上がり品質も向上した。
もともと人手不足により最適な人員を確保できていない中、従業員の急病等による欠勤で当日の作業に支障が生じたり、代替要員を他現場から手配する必要が生じたりすることがあったが、ロボット導入によって生み出された余剰時間を活用することで、こうした状況にも対応できるようになり、さまざまなコスト削減につながっている」と染矢総務部長は語った。
また、IoT機能により「いつ、どこを清掃したか」がデータや図面として可視化されるようになったことも大きな成果である。これまでは現場の記憶や手書きメモに頼っていたが、導入後はデータに基づいて最適な清掃計画を立てられるようになり、管理業務の効率化も進んだという。
力仕事である床洗浄から解放されたことで、従業員の身体的負担は大幅に軽減され、特に高齢のスタッフにとっては、これからも長く働き続けられるきっかけとなるかもしれない。
「感染症対策と転倒事故の防止という2つの重大な責務を担う病院の床洗浄で、安全面に問題がないことを確認できれば、他の管理物件へのロボット導入も段階的に進めていくことが可能になる。「機械に任せられること」と「人が担うべきこと」を明確に分け、テクノロジーと人の力が調和した新しいビルメンテナンスの形を目指していきたい」と染矢総務部長は力強く語った。
初めての補助金を上手く活用した新生ビルメンテナンス株式会社
新生ビルメンテナンス株式会社は、補助金を単なる「コスト削減の手段」としてではなく、「社員の負担軽減」と「顧客への提供価値の向上」という両立を図るための「戦略的投資」として捉えていることがうかがえる。
社内でプリントシールを募集し、貼付けることで親しみやすい外観を備えた最新のAI清掃ロボットが黙々と廊下を磨く傍ら、同社の従業員が細やかな心遣いで患者や病院スタッフに接する。
テクノロジーと人間が共生する清掃現場の未来が、ここ久留米から始まっていると感じた。
| 活用した補助金:中小企業省力化投資補助金 |
| 年度:公募回 9次 |
| 枠・型:カタログ注文型 |
※本ページに掲載している補助金活用事例は過去の補助制度によるものであり、現在の補助制度とは異なる場合があります。最新の補助要件については、必ず公式情報をご確認ください。
企業データ
- 企業名
- 新生ビルメンテナンス株式会社
- 設立
- 1987年5月
- 従業員数
- 265名
- 代表者
- 園田 繁博 氏
- 所在地
- 福岡県久留米市宮ノ陣4丁目30番1号







