公開日:2026年04月14日
- 製造業
- 持続化補助金
地域支援機関とともに生産性向上に取り組む企業事例(有限会社小島製菓)
老舗和菓子店3代目が補助金申請で得た学びと気づき
この記事のポイント
- 3代目社長が入社して直面した、老舗菓子製造会社の課題
- 経営指導員が伴走し、補助金の活用とともに課題解決へ
- 申請を通じて得た、事業計画の大切さと「先を見通す経営」の考え方
東日本大震災やコロナ禍など、度重なる環境変化に直面しながらも、事業の転換と新たな挑戦によって再生を果たした老舗和菓子店がある。岩手県釜石市で創業80年を迎える有限会社小島製菓である。
釜石商工会議所の伴走支援と補助金の活用をきっかけに、自社の強みである「あんこ」を軸とした商品開発や販路開拓に取り組み、事業を再構築していった同社の挑戦を紹介する。
環境の変化に翻弄された祖父と父の時代
有限会社小島製菓は、3代目代表取締役の菊地広隆氏の祖父が1945年(昭和20年)個人で創業し、1965年(昭和40年)に法人化した。人口増加を背景とした大量生産・大量消費の波に乗り、県内スーパーマーケット約30店舗に、大福や串団子など40種類の和菓子を長年販売し業績は順調に推移していた。
しかし、1997年(平成9年)に菊地広隆氏の父が代表取締役に就任した頃から、相次ぐ競合他社の参入によって価格競争に巻き込まれ、売上は年々減少。さらに、東日本大震災が追い打ちをかけた。販売先であったスーパーマーケットが被災し、販路を失ったことで、売り上げは下降の一途を辿った。
3代目になって知った小島製菓が抱える課題
東日本大震災発生当時、菊地広隆氏はカナダで社会人生活を送っていた。大学卒業後、高級外車の販売代理店で富裕層向けの営業を経験したのち、カナダに渡り人材派遣業に従事した。さまざまな仕事を経験しながら、自分でやりたいことを模索し、理想を追いかける充実した社会人生活を送っていた。
「実は当時、家業を継ぐことは全く考えていなかった。そもそも和菓子もそんなに好きじゃない」と菊地広隆氏は正直に語る。
震災後、2代目である父が体調を崩して入院した。それまで自身の社会人生活に一切口を出してこなかった母から、初めて「帰ってきてくれ」と言われたことで、ようやく、会社を「継ぐ」決心が固まった。
その翌年の2012年(平成24年)、カナダから帰国して小島製菓に入社した。そして翌年2013年、3代目として代表取締役に就任した。父が亡くなる1年前のことだった。
事業承継前に、父と綿密に話し合ったのは、わずか1回だけであった。
震災によって大幅に減少したスーパーマーケット向け日配菓子(※1)の売上を補うため、駅構内や売店、道の駅などで販売する土産菓子へと軸足を移した。3代目に就任後すぐに、同社としては初めての土産菓子「しあわせの酒まんじゅう」を製作した。
「父は味見をしたあと、小島製菓で販売するのではなく、新会社を設立してそこで販売してはどうかと提案してくれた。きっと、「しあわせの酒まんじゅう」の可能性を見出し、借金の多い小島製菓では足かせになると考えたのだと思う。けれど、未だに父の真意には辿り着くことができない」と菊地社長は語る。
(※1)スーパーやコンビニのチルドコーナーに毎日配送される、賞味期限が短い冷蔵・生菓子のこと。
「父は職人気質で、味の原型を築いてくれた。味そのものは優れているものの、お客様のニーズを聞く機会がなく、当社にはマーケティング力が不足していることに気付いた。この課題を克服するため、お客様の声を直接聞けるカフェを開業したいと考えたが、資金的余裕はなかった。さらに、このアイデアを相談する相手もいなかった」
そこで菊地社長は、母から紹介された釜石商工会議所へ相談することにした。
商工会議所に相談したことが課題解決の入口だった
釜石商工会議所で相談を担当したのは、経営支援課の土橋一志課長である。
土橋課長は菊地広隆氏の父の時代から小島製菓を訪問していた。
先代から落雁(らくがん)の型などの説明を聞くのが好きだったと語る土橋課長だが、先代は息子の菊地広隆氏について、一言も話さなかったという。
「カフェ開業資金として第二創業補助金(※2)を活用したいと相談を受けましたが、伝統ある菓子製造会社がなぜカフェなのかと、やや突飛な印象を受けました。しかし、菊地社長の話を聞くうちに、カフェ開業は単なる思い付きではなく意図が明確であることが分かり、支援することを決めました」と土橋課長は振り返る。
土橋課長の支援もあり、2013年(平成25年)に、自社製の和菓子を提供する「Kojima Cafe 釜石店」をオープンした。
(※2)事業承継者が既存の経営資源を有効活用しながら、新たな事業領域へ積極的に進出することを支援する目的の補助金。
これまでの営業活動も実を結び、JRの駅売店や土産物産店からの引き合いも強く、さらに県内土産コンクールで「岩手県市長会会長賞」を受賞するなど、同社の看板商品へと成長した。
菊地社長は、その後も土橋課長に相談しながら、スーパーマーケットへの日配菓子卸から、土産菓子卸主体への方向転換を進めた。
ラグビーワールドカップ2019日本大会で、釜石鵜住居復興スタジアムが会場になることも追い風となった。
こだわりの自家製あんこをパイ生地で包み、ラグビーボール状に仕上げた「釜石ラグビーパイ」をラグビーワールドカップ2019開催の前年から先行して製造・販売した。
これまでの営業活動も実を結び、JRの駅売店や土産物産店からの引き合いも強く、さらに県内土産コンクールで「岩手県市長会会長賞」を受賞するなど、同社の看板商品へと成長した。
小島製菓に長年蓄積された伝統技術と、菊地社長が社会人時代に培った営業力や仮説検証力がうまくかみ合い、Kojima Caféも軌道に乗ったこともあり、事業承継後の業績は急速に回復した。
コロナ禍の大打撃、相談した先は、やはり商工会議所
2020年(令和2年)2月期決算で、売上は事業承継後最大となった。しかし、その後新型コロナウイルスの感染拡大に伴って観光客が減少し、土産菓子の売上は低迷した。Kojima Caféも休業を余儀なくされた。
この頃には日配菓子部門から撤退していたことも裏目に出て、菊地社長の頭には「倒産」の2文字がよぎったという。そこで菊地社長は、事業承継後も継続して相談していた釜石商工会議所の土橋課長を訪ねた。
「こちらから何か提案をすることはせず、とにかく菊地社長の話を聞き続けました。話をすべて聞いたうえで、小島製菓の強みは何かを問い続けました。経営者として、確固とした「芯」を持って欲しかったのです」と土橋課長は当時を振り返る。
「土橋課長と何度もやり取りをするうちに、頭の中が整理されたのです。」
菊地社長は、イートイン主体であったKojima Caféを飲食店の枠にとどめず、テイクアウトとEC販売のための製造拠点へと業態転換(注3)し、販路拡大を図る方針を自ら導き出した。
土橋課長から常に強みを問い続けられたことで、自社の強みである自慢の「あんこ」を活かした「あんぱん」を開発し、テイクアウトの主力商品の一つと位置付けた。
この構想を実現するため、2020年(令和2年)に持続化補助金<コロナ特別対応型>を申請し、採択された。
(注3)企業が現在の事業内容や営業形態を変更し、新たな分野に進出すること。
補助金を活用してKojima Caféのキッチンを拡張し、来店したお客様の意見を取り入れながら、テイクアウト用の菓子やパンを製造できるようになった。
また、EC販売の商品を梱包・発送するための作業場も、改装によって確保した。
さらに、「お菓子は食べるのに、子どもがご飯を食べない」という保護者からの悩みを受け、野菜パウダーなどを練り込んだクッキー「MUSUBit」を開発し、2021年(令和3年)2月に発売した。
子供たちの偏食や栄養不足の改善に役立つ食品として、現在は近隣の学校給食に採用されるとともに、子ども食堂でも提供されている。
事業計画作成と商工会経営指導員の支援が生んだ
3代目社長の意識変化
持続化補助金の申請を通じて、菊地社長は事業計画の重要性と補助金制度のありがたさに気付いたと語る。
「頭の中を可視化できる事業計画の重要性に気付き、補助金申請の有無にかかわらず、毎期必ず事業計画を作成しています。こうした計画の重要性を、釜石の全事業者に伝えたい。
持続化補助金を申請する際には、申請書を完成させるために、さまざまなことを事前に調べ、想定する顧客のニーズなどを考えることは、実際に事業を進めていくうえでもとても役立ちました。
今思うと、補助金申請は、自分一人では決して成し遂げることは出来なかった。
土橋課長と真剣に向き合い、自分の考えを語っていく過程で、計画の内容がより具体化していきました。
私たち、小規模事業者は資金面の制約が多い中で、挑戦を後押ししてくれる補助金制度は、とてもありがたい存在です」
また、支援を行った土橋課長は次のように語る。
「小規模事業者は、目の前の仕事をこなすだけで精一杯になりがちです。だからこそ、先のことを考えて、計画を立てる習慣が身に付く持続化補助金は、とても役立つ制度だと思います。
東日本大震災やコロナ禍のような大きな変化が起きたとき、事前に計画を立てている事業者は、先を見通している分、立ち直りは早いと感じます。一方、計画を作成していない事業者は途方に暮れ、再建までに長い時間を要することが少なくありません。」
最後に、菊地社長に今後の展望を聞いた。
「この先3~5年は会社の基礎固めを行い、強い組織を構築したいと思います。生き残りをかけて、今は種をまいていきたい。これまでは急いで刈り取りを進めるタイプでしたが、これからはじっくり腰を据えて機が熟すのを待ちたいと思っています」
事業計画の重要性を語る菊地社長の言葉には、幾度もの環境変化に向き合いながら老舗企業の未来を託された経営者としての、揺るぎない決意がにじんでいた。
| 活用した補助金:小規模事業者持続化補助金 |
| 年度:令和2年度補正予算 第2回 |
| 枠・型:コロナ特別対応型 |
※本ページに掲載している補助金活用事例は過去の補助制度によるものであり、現在の補助制度とは異なる場合があります。最新の補助要件については、必ず公式情報をご確認ください。
企業データ
- 企業名
- 有限会社小島製菓
- 設立
- 1945年個人創業/1965年(昭和40年)2月法人設立
- 従業員数
- 13名
- 代表者
- 菊地 広隆 氏
- 所在地
- 岩手県釜石市上中島町1-2-38
支援機関データ
- 支援機関名
- 釜石商工会議所
- 所在地
- 岩手県釜石市只越町1-4-4







