2025.05.19
- 不動産業,物品賃貸業
- IT導入補助金
生産性向上に取り組む企業事例
日常業務のIT化で効率化を実現、建設機械レンタル・リース事業で石垣島の発展を支える。

ポイント
- その地域で何が求められているのか見極めることの重要性
- 従前の業務に捉われず、日常業務の中から効率化を検討する
- 業務自体の分析と、ツール情報の収集はしっかり行う
沖縄県の八重山列島にある石垣島は、島全域が沖縄県石垣市に属している。青い海と豊かな自然に囲まれたこの島は、国内の観光地としても非常に人気の高い地域である。この石垣市で建設機械のレンタルや車両整備を中心に事業を展開するのが、株式会社双葉建機だ。
同社は2010年に設立され、現在ではグループ会社も含めレンタカー事業や自動車部品、油圧ホースの製造販売などの事業を広げている。

石垣島での建設機械のレンタル・リース事業
同社は、石垣島を拠点に役員4名で建設機械のレンタル・リース事業をスタートするところから始まった。当時の石垣島では駐屯地の開発や空港の移転などの工事も行われており、施工自体の需要も増加傾向にあったという。
「特に新石垣空港の建設後は、インバウンド需要や国内観光客がかなり増加しました。それに伴って商業施設等の建設や整備もかなり進められています。そうなると、施工用の重機は大小問わず必要になりますので、弊社で扱っている建設機械を利用して頂くケースは多いですね。コロナ禍でも工事自体が取りやめになることはありませんので、受注などにそこまで影響はありませんでした。」そう話してくれたのは、常務取締役の山本氏である。山本氏は石垣島で同社を創業した4人のうちの一人であり、創業当初から社内の財務会計を含め様々な業務を担っている。
加えて、同社は数年前から観光需要に応えるため、子会社を設立し一般車両のレンタカー事業もスタートしている。土地柄とも言えるが、クルーズ船の寄港時などには海外からの観光客も相当数に及び、レンタカーの需要もかなり高まっている。同社ではレンタカーだけで130台以上の車両を保有しているという。
建設機械や一般車両のレンタル事業を行う上では、貸し出す車両のメンテナンスや修理・車検も必要となるため、以前まではその部分を外注で賄っていた。ただ、外注業者とのやり取りに掛かる労力やスピード感を考えれば、少し効率は悪い。そこで経費削減やサービスのスピード向上を図るため、今ではその部分を内製化している。
事業を拡大する中で関連する業務を内製化し、全体最適化を図り効率化を実現したモデルケースである。

労力のかかる業務を見極め、ピンポイントで解決する
順調に事業を拡大する一方で、経理処理や決算などの事務作業面での業務負担は少しずつ増加していた。
「創業当初から、税理士に相談しながら基本的に私が担当していました。それほど規模も大きくなかったため手作業で対応していたのですが、管理する範囲や売り上げの規模等が変わってくると、その作業もかなり負担になっていました。その頃から何かで効率化ができないかということを考え始めていました。」と山本氏は振り返る。
このため、会計ソフトを導入することを検討し、ツールの選定に際しては同業者の口コミで、評判の良い大手会計ソフトに決めている状態だったという。導入にあたり利用できる補助金がないか税理士事務所に相談したところ、IT導入補助金の話しを受け、補助金申請にもチャレンジすることになった。
「会計ソフトを導入してからは、会計や決算処理が非常に楽になりました。以前はローカルで管理しているExcelの情報を合算したりと、目的の作業を行うための下準備にも時間を取られていましたが、データが一元管理されているため複数のExcelから情報を抽出する必要もなくなり、非常に効率化されました。体感では月3日程度かかっていた作業が削減されていると思います。」

また、同社は別の部分のデジタル化も検討しているという。
「事業を拡大すると重機や車両を貸し出す機会も多くなり、比例して取り扱うモノの数も増えます。今はその重機や車両の管理をどのようにデジタル化できるか考えているところです。QRコードなどで管理できれば楽なのですが、建設現場で利用されるということもあり、QRコードへの汚れや破損なども考慮しなければなりませんので、難しいところです。」
と山本氏は話す。
確かに、ここ最近は業種によってQRコードで在庫管理を行うケースも増えてきている。
ただ、山本氏の言うように利用されるシチュエーション等によって他業種での利用例をそのまま踏襲できるとも限らない。活用できそうなモデルケースを自社の利用環境と照らし合わせ、利用できる手法を検討することが新しいソリューションを生み出すきっかけになるのかもしれない。
ITツール導入にあたっては、導入すること自体が目的化してはいけない。業務のどの部分に労力がかかっており、どこを効率化したいのかをしっかりと分析し検討することが重要である。また、同社のように同業者等とのコミュニケーションから自社にとって有用な情報を収集し業務改善につなげることも有効な手段である。また、ITツールの導入により社内のあらゆる数値や情報等がデジタル化され一元管理されることで、経営や利益拡大に直結する情報をリアルタイムに確認できることも非常に大きなメリットであり、経費を正しく迅速に把握することにより仕入れ等におけるロスの削減や、売上や人件費などから最適な人員配置を行えるなど、活用方法によって恩恵は様々である。同社においては、こういったメリットをうまく活用し経営状況の把握や業務効率化を図っており、今後も労働生産性向上に向けたITツールの活用が期待される。
今後の展望について
「駐屯地の開発等で工事の需要も増加傾向が続くと思いますので、今後も無理に新事業の開拓等はせずに、引き続き施工会社等の方々に対しての建設機械のレンタル・リース事業を増強しつつ、国内観光・インバウンド需要に向けたレンタカーのサービスも続け、今ある事業を守りながら会社の地盤をしっかり固めていきたいと思っています。」
石垣島が観光地として親しまれる裏には、観光地の整備や建設、移動手段の確保などインフラ部分の整備が必要不可欠である。自社の成長とともに、地域発展にも重要な役割を果たしている同社に今後も期待したい。
企業データ
- 設立
- 2010年
- 従業員数
- 25名
- 代表者
- 代表取締役 山本 耕平氏
- 所在地
- 沖縄県石垣市宮良1055-29