2025.03.03
- 建設業
- IT導入補助金
生産性向上に取り組む企業事例
地域のインフラを支えながら、計画的な事業展開で成長を続ける企業

ポイント
- 目標へのステップを明確にして事業計画を立てる
- 仕事の幅を広げるために必要な要素を見極める
- 新領域へも積極的にチャレンジを
北海道函館市は北海道南部に位置し函館港を介して本州と結ぶ交通結節点であり、道南地域の中心都市として発展し、有数の観光都市でもある。この町で建設業を営むのが、株式会社宝正設備工業である。同社は、水道管などの配管工事を主な事業とし、官公庁施設や民間施設の修繕・設備改修、スプリンクラーなどの消防設備工事などを数多く手掛ける、地元のインフラを支える企業の一つである。
計画的な独立と目標設定
同社は、平成19年4月に代表である田口正則氏が設立した会社であり、20年弱の歴史を持つ。
「社会人として働き始めた当初から、設備工事業界に身をおいています。もともと屋内外の水道管などの配管工事を手掛ける会社に勤めていました。そこで設備工事の知見や技術を学びました。しばらくしてお客様や取引先様との関係性も構築されていくなかで、この業界で自分で事業をやってみたいという思いが強くなり、まずは個人事業主としての独立を決心しました。」と田口代表は語る。
個人事業主としての事業を開始してからも、今まで付き合いのあった顧客や取引先、大手設備工事会社からの仕事を受注できていたため、独立後に仕事が減って困るということはそこまでなかった。
「事業を開始してからも、それなりに仕事はあったのですが、個人という小さい規模で続けていこうと思うと、どうしても大手設備工事会社の下請けになってしまいます。自分で事
業をやりたいという思いで独立したこともあり、下請けではなく元請けとして仕事をしていきたいと考えていました。」田口代表は当時の思いをこう話した。
個人事業主としての事業展開に限界があると感じていた田口代表は、法人化を目指すと同時に、法人化後に取得すべき様々な資格や許可などを調べ、将来的な計画をしっかり練り始めていた。
法人化により広がった仕事の幅と、外的要因による苦難
6年ほど個人事業主として施工実績を積み、事業の地盤を固めた後、平成19年に法人化した。
「法人化に際しては、個人事業主時代から仕事上で付き合いのあった方を専務におき、2人で立ち上げました。そして、建設業の許可や各種資格等も取得したことで仕事の幅がかなり広がりました。当時の私の年齢でも、大変な挑戦でしたが、何とか乗り越えました。」
建設業という業界において、元請けになることや企業として自立することを目指すうえでは、“建設業許可”は非常に重要だと田口代表は語る。
建設業許可を取得するには、一定の事業実績や有資格者の在籍が求められるなど、厳しい要件があり、簡単に取得できるものではない。しかしながら田口代表は、独立当初から法人化後の自立した事業展開を目標にして、計画的に事業を進め、自己研鑽にも取り組み建設業許可の取得に至っている。また、法人化後は官公庁系の入札事業にも挑戦し、同社として官公庁系の施工実績も着実に積み上げていた。
着実に成長してきた同社だが、直近の数年間は様々な苦労があった。札幌市では冬季オリンピックの招致活動が長年続けられていたが、何度も延期となり最終的には2030年に向けて招致を目指すことになった関係で、ホテルなどの建設計画も複数あり、同社もそういったいくつかの建設計画の施工業者として参加する予定だったが、招致活動の停止が正式に発表され、それを受けて建設計画も中止とならざるを得なかった。建設計画には外的要因が多分に影響するとはいえ、同社としてはかなりの痛手だった。
また、コロナ禍では施工現場でのマスク着用や手指の消毒、体温計測の義務化など、状況を鑑みればやらざるを得ないものの、実際に現場の作業員の手間を考えれば一定の負担になっていたことも事実であり、当時はこういったことの管理も煩雑になっていた。


手間のかかる業務を見極め、IT化で確実に効率化する
困難な状況はありながらも、仕事の受注数は着実に増えるにつれ、当然その分の見積りや積算業務も増加していった。うれしい悲鳴ではあるものの、事務作業は非常に手間のかかる作業になっていた。
「見積りや積算業務自体は、私自身が行いたいという思いがあり、法人化後も基本的には私が見積りなどを作成していたのですが、発注者からの設計書を確認し、材料費の一覧を見て、必要数を計算して、という具合で全て手作業だったため本当に手間がかかっていましたので、自動計算などデジタルで解決できないかとは考えていました。」
ちょうどこの頃、とあるITベンダーの営業担当から積算システムを紹介された。しばらくは説明を受けるのみに留まっていたが、機能面や費用面などの相談を何度か重ね勧められたシステムの導入を決めた。また、そのITベンダーからIT導入補助金の存在を聞き、補助金の申請にもチャレンジした。
「補助金の申請やITツールの導入時には、ITベンダーの手厚いサポートのおかげで、そこまで苦労はありませんでした。特にITツールの導入時のレクチャーも丁寧でしたし、導入後も何か分からないことがあれば営業窓口の方がフォローしてくれますので、ツールを利用するうえで困ったことも特にありません。また、ITツールの導入後はネックになっていた積算業務が大幅に効率化されました。発注者からの電子設計書を取り込み、設計条件を自動で判断し積算してくれるため、大幅な効率化につながっています。」

将来の事業展開に向け、新領域へチャレンジ
「最近では、スプリンクラーなどの消防設備関連の仕事も受けています。ある建物修繕工事の現場で、消防設備メーカーさんとたまたま一緒になったことがあって、そこでお互いの仕事の話をした際に、一緒に仕事ができないかということを話したのがきっかけで、今の消防設備関連の仕事に繋がりました。」
一定規模の建物が増えれば、その分スプリンクラーが必要となる建物も増えてくる。そこに目をつけた田口代表が、会社の新事業として開拓した新たな分野である。こうした現場での出会いやその場で生まれる発想を現実的な観点で判断していくことが、新事業を開拓するうえで重要な要素である。
将来的にも、官公庁案件の公共事業に加え消防設備関連の事業を両軸で伸ばし、同社の主軸としていきたいと田口代表は話す。
今後も、計画的に事業を展開しながら業務のIT化や新しいことへのチャレンジを通して、地域のインフラを支える同社に期待したい。
企業データ
- 企業名
- 株式会社宝正設備工業(カブシキガイシャホウセイセツビコウギョウ)
- 設立
- 2007年
- 従業員数
- 4名
- 代表者
- 代表取締役 田口 正則 氏
- 所在地
- 北海道函館市西桔梗町835番地63