2025.02.27
- 卸売業,小売業
- IT導入補助金
生産性向上に取り組む企業事例
「人と人をつなぐ総合ギフト」EC事業を通じて想いを届けるために挑戦し続ける企業

ポイント
- 父から事業承継、新ブランド構築や出店など積極的に事業を展開
- ECへの挑戦、M&Aにより新たなプロダクトを取り入れ、急成長
- 事業規模に合わせて、社内の財務会計機能をデジタル化
株式会社FLEGRE(フレグレ)は、主にEC事業やEC運営のノウハウをベースとした卸売業やECコンサルティング等を手掛ける新潟県新潟市に事業所を置く企業である。
同社のルーツは、現代表・藤井正明氏の父である藤井秀夫氏が1969年に開業した「藤井印章店」、いわゆる昔ながらの判子屋さんである。1988年に「有限会社フジイ」を創立し、2003年に現代表の藤井正明氏が代表取締役として就任した。その後、藤井社長のもとでEC事業の展開やM&Aでの事業拡大等が行われ、今では従業員100名ほどが在籍する企業、株式会社FLEGREへと成長している。

現代表の藤井社長は今でこそ経営者として会社を牽引するリーダーではあるが、もともとはサラリーマンとして企業勤めをしていたという。
「20代の頃は、東京の広告代理店でサラリーマンをしていました。媒体の担当で広告枠を買う仕入れの担当でした。そのうちに“何か自分でやりたい”という想いに駆られて会社を辞め、30代前半にワーキングホリデーでオーストラリアに行きました。その海外経験で自分の中で日本文化への関心が高まったことや、親孝行をしたいという想いもあり、父の会社を継ぐことを決めました。」と藤井社長は語る。

先代である父は判子を彫る技術者、一方で現代表の藤井社長は全く異なる業界のサラリーマンであったこともあり、事業を行う中で多少の衝突はあった。ただ、藤井社長としても、父が築き上げてきた“判子”という文化に対する想いは強かったため、代表取締役に就任した後も、判子を軸とした事業展開に挑戦した。2004年には名入れ雑貨やストラップ判子等を取扱う「きざむどっとこむ」というブランドを開店し、新潟市内の地下街や当時新潟商工会議所が運営していたチャレンジショップ、地域イベント等に出店し、実演販売なども積極的に行った。彫刻にはレーザー加工機も導入し、実演販売でインパクトのある演出も行った。
しかし、判子というもので利益をあげていくことは中々難しいという現実にも直面。会社としてどうにか利益を拡大しなければいけないため、色々と考えを巡らせ、この頃から名入れ雑貨をリアル店舗とオンライン、いわゆるECで売り出すということにも意欲を持ちはじめた。
EC販売への挑戦と経営判断の重要性
「EC販売は、当時、自分たちで梱包から発送まで行う必要があったので手間はかかりました。しかし、リアル店舗のように出店の手間や販売の人員が必要ない点は効率的でした。」
この頃、きざむどっとこむの店舗を閉店し、名入れ雑貨のEC販売を軸にする方針に切り替えた。その後、葛藤はあったものの、父が開店した藤井印章店を閉店し、印章類販売から撤退、会社としてEC参入に大きく舵を切った。まさに“選択と集中”とでもいうべき経営判断である。そしてしばらくして名入れ雑貨をベースに「ギフト」という分野への関心が藤井社長の中で高まっていった。同時にこの頃、プロダクトの軸が変わり会社としての方針や経営理念を見直す機会でもあった。特に先代である父から受け継いだ“フジイ”を冠する会社のフジイ色からの脱却を意識していた。社員にとっての働く理由や指針、会社がどうありたいかを考え、今に固執せず常に改革を行い前進していきたいという思いから、FLEXIBLEとPROGRESSを組み合わせ、“株式会社FLEGRE”と社名変更を行った。

その後、もっと人と人をつなぐ総合ギフトを取扱いたい、その想いから事業拡大を視野に入れ、商工会議所やよろず支援拠点、専門家などに相談しながら、花や食品など様々なプロダクトを持つ企業の紹介を受けM&Aにも挑戦し、ギフトの幅を広げていった。
「正直、ここ数年は成長の期間でした。コロナ禍でEC事業が成長し、教科書通りの成長を遂げたと思います。組織としても、社員とそこまで密な連携を取らずとも一人一人が個々の能力を生かし事業を回している自走組織でした。」
M&Aを行ったことで事業が大きくなるにつれて、本社以外にもいくつかの事務所を持つようになり、管理しなければならない範囲も増えていった。
この頃から、販売や販促などのフロント業務だけでなく、子会社などが増えたことによる財務会計などのバックオフィス機能の課題に対して何か対応しなければという想いが藤井社長の中では芽生えていた。

企業の成長で見えてきた課題、財務会計のIT化を検討
「M&Aを経て、関東など複数拠点ができたこともあり財務会計においては限られたリソースの中でどう内製化できるか、担当が離れた地にいてもWEB上で完結できるのではないか、ペーパーレス化も可能か等を考えるようになりました。」事業が拡大すれば財務会計も比例して複雑化してしまう、藤井社長はその点の改善を行うことにした。
ここで注意したかったのは、M&Aを経てグループとなった会社の財務会計を、いかに統一的にシステムで管理し効率化できるかということと、ツールを導入したは良いが十分に活用できず利用しなくなることだったという。できる限り使いやすいものを統一的に導入しその業務にかかるコストを低減させたい、そんな想いでツールの検討を行っていた。
とはいえ、藤井社長自身は財務会計分野にはそれほど明るくなく、ツールも特に心当たりがなかったため顧問税理士に相談したところ、所属している税理士会で取り扱っている会計ソフトがあると聞き、そのツールの説明を受けた。さらに話しを聞いていくとIT導入補助金という国の補助金が活用できるということで、そのツールの導入を決めたという。
「この時はちょうど目的の部分に対して、補助金があるということで更に背中を押されました。やはり設備投資は一定の負担がかかりますから、こういった補助金があるのは非常に助かります。」
使いやすいツールを導入する場合であっても、新しい何かを導入する時には新旧業務の突合や引継ぎなどでどうしても労力が掛かるものだ。
「ツール導入に際しては、ツールを取り扱っているベンダーが導入サポートに入ってくれたので、そこまで苦労は無かったと思います。特に今回の場合は普段の会計財務をお願いしている顧問税理士がこのツールを利用しているため、とても話しが早かったですね。」
ツールを導入したことで、会社の会計財務はWEBベースになり、担当者がどこにいようと場所を選ばずに複数拠点分を管理できるようになった。加えて会社の決算作業や社員の年末調整等も効率化され、財務会計業務に関しては負担が大幅に軽減された。

今後の展望について
「今、弊社は業務改革や改善を求められている時期にあると思っています。コロナ禍で成長した弊社ですが、コロナ禍が明け収益も含めて事業自体が停滞ぎみになり離れてしまった社員もいます。
まずは徹底的に組織構造を見直す必要があると思っています。それなりに上手く回っている時と今とでは、経営手法を変えていかなければなりません。またプロダクトについても海外への進出や既存製品であれば、個人向けギフトと法人向けギフトを見直すなど、課題は山積です。ですが私は昔から改善というか、挑戦自体をし続けていきたい人間でもありますので、現状を期にしっかり改善を図っていきたいと思っています。」藤井社長はそう話してくれた。
今の時代、AIをはじめとする高度な技術が発展し、ユーザーのニーズも多種多様になっている世の中で、業種業態ごとに必要なサービスの変化も非常に早い。
今後も進化し続ける株式会社FLEGREが、どのような“ギフト”をユーザーに届けてくれるのか期待したい。
企業データ
- 設立
- 1988年
- 従業員数
- 102名
- 代表者
- 代表取締役 藤井 正明 氏
- 所在地
- 新潟県新潟市中央区神道寺南2丁目4-15