2025.02.14
生産性向上に取り組む企業事例
秋田県秋田市で建築業を営む株式会社ライトプラン。「モノ造りとしての楽しみ」をお客様と共有し、お客様の細かなご要望にも最大限寄り添ってお応えすることをモットーに住宅の設計、建替え、リフォーム、リノベーション等を主な事業としている。同社のホームページを訪ねると、施工事例や工法、色々な建築材料の性能などの説明に加えて従業員の紹介などが非常に分かりやすく丁寧に、そしてどこか温かみを感じる雰囲気で掲載されており、
家づくりへの真摯で温かい想いが伝わってくる。
「住宅業界に入って、30年ほどになります。20代ではサラリーマンとして住宅販売等の営業職についていました。その時はやはりノルマがかなり厳しかったのを覚えています。ノルマに追われてお客様の要望に応えることやそれ以上の価値提供ができずにいました」そう話してくれたのは、代表取締役である佐々木氏だ。同社は、佐々木氏が当時所属していた会社を辞め、2008年に設立した会社である。会社に所属し営業職に従事する中で、お客様に対し“もっとこういう提案ができるのではないか”“遊び心としてこういったものはどうか”など、営業効率とは別のベクトルでお客様としっかり向き合い、お客様の要望をかなえるような自由度の高い住宅提案がしたいという思いが強くなり、フルオーダーとリノベーションを両立する形での事業展開を目指し独立を決めた。
「創業時には商工会で創業支援を受けながら、事業計画を練りました。今では懐かしいですが、創業当初は私一人でしたので、2帖ほどの自宅の書斎から事業を始めました」
また、家造りでは、お客様の要望に応えるために、住宅の施工や住宅に関わるインフラ部分である水道工事や電気工事も非常に重要になる。その点は佐々木代表が会社勤めをしていた頃からの付き合いで、信頼できる業者と繋がりがあったため、引き続き各業者や職人の協力を得ながら独立直後の仕事のロスもほとんど無く事業を進めることができた。
ここ最近はSNSの広がりもあり、顧客のニーズも多種多様になってきている。住宅においてもそれは同様で既製品よりも自分の個性や、やりたいことを優先する傾向にある。
「弊社に来てくださるお客様は、決められたモデルの中から選ぶというよりは、とにかくやりたいことを全部かなえたいという方が多いです。そしてそれは、弊社がお客様に提供したいものでもあります。かかる費用以上にお客様の満足度は高いですね」と佐々木社長は話す。
内覧会等で実際に見ることでの成約率は当然高くなるが、SNSきっかけや既存顧客からの紹介なども多くなってきており、個人での情報収集が容易になったことや口コミを重視する現代の特徴が影響しているとも推察できる。
「やはりコロナ禍で、新築の受注数は減りました。一方で自宅にいる機会が増えたこともあり、リフォームの需要は非常に増えました」
また、リフォーム需要が増えた背景にはもう1点、土地の価格が上がっている現代の傾向も関係しているという。新築とリフォーム、同じ価格であれば既存の土地や家を利用してリフォームした方が、自分が理想とする形を実現できることも少なくない。特に同社はリフォームやリノベーションについても広い知見を有しており、顧客の要望を最大限かなえるという意識が高い満足度につながっている。同社に新築住宅の設計やリフォーム等を依頼した顧客のアンケート結果を見ても、それは明らかだった。
「今まであまり補助金や助成金は利用してこなかったのですが、従業員が増えたこともあり、3DCADの導入を検討した際に補助金の活用を併せて検討しました」
今や様々な業種で利用されているCADシステムだが、もちろん住宅業界でも図面の展開や見積りなどで活用されている。佐々木社長がCADを使い始めたのは会社に勤めていた頃だという。
「当時、CADがちょうど使われ始めたくらいじゃないでしょうか。それ以前は図面の展開や見積りなども当然手作業でやっていましたので、CADを利用し始めてかなり効率的になったと思います。特に今回導入しようと思った3DCADは、会社に勤めていた頃から使っていましたが、良い意味で玄人感がなく多少慣れていなくても直感的に使えることや、例えば壁のクロス貼りをしようと思った時に、図面から壁面積をすぐに出して見積りを作れたり、そういった点が非常に使いやすいです」
今回、補助金を活用しようと思ったきっかけは、導入したかった3DCADを取り扱っているITベンダーからの提案だった。もともと3DCADの導入自体は検討していたものの、導入に際し活用できる補助金があるということを知り、補助金の活用を決めた。
申請にあたっては、購入先のITベンダーがIT導入補助金のIT導入支援事業者の登録を受けており、補助金申請についても知見があったため、基本的に佐々木社長自身で申請を行いつつ、不明点などがあればITベンダーからもサポートを受けることができた。
「3DCADを導入することで、作業効率が飛躍的に上がりました。そうしてできた時間をお客様の対応に費やすことができるため、総体的にも効率的だと思います」
顧客との時間を一番に考える同社にとっては、IT化による事務作業効率の向上は、重要な課題であり、ITツール導入により顧客対応の時間が増え、結果的に会社の利益につながることはまさに業務のIT化における理想形と言えるだろう。
「直近では会社を大きくしようとか従業員を増やそうということは特に考えていません。今いる従業員は、私と同じ想いを持つ信頼できるメンバーが集まっています。ですから、数を稼ぐのではなく、お客様の要望をすべて聞いたうえで実現できることを一緒に考えて提案し、形にするということを忘れずに、今後ももっと多くの方と満足度の高い“家造り”をしたいと思っています」
同社は、居住用の住宅の他に飲食店などの店舗に関しても設計やリノベーションの依頼を受けている。そのようなケースにおいても顧客のニーズを最大限反映させたいという思いはもちろん変わらない。これからも、顧客の幅広いニーズに応えながら満足度の高い理想の住宅や店舗を造り地元を支える同社に注目したい。
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