2025.07.15

  • 宿泊業,飲食サービス業
  • 持続化補助金

支援機関とともに生産性向上に取り組む企業事例(ramen BIRDMAN)

“ラーメン愛”から始まった新たなラーメンブランド確立への挑戦

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左から ご主人の中村正志氏 代表の中村晴代氏 御坊商工会議所 佐藤浩知経営指導員

この記事のポイント

  • 鶏白湯専門の独自ラーメンで地域に新風
  • 補助金活用が後押しした経営改革と挑戦
  • 将来の夢に向けて新たな展開が始動
ラーメン愛を胸に、独学で鶏白湯ラーメンを追求し続けた夫と代表者である妻が和歌山県内でラーメン店2店舗を展開。事業拡大のため、商工会議所の経営指導員の支援を受けて補助金を活用し、セントラルキッチンを導入。地域に根ざしたラーメンブランドを確立し、拡大しようとする取組みを紹介する。


「ramen BIRDMAN」は、2014年7月に和歌山県御坊市で開業した「濃厚鶏白湯スープ」ベースのラーメン店。現在は、御坊市と和歌山市の2店舗で営業している。御坊店では創業当時からの濃厚鶏白湯スープベースのラーメン、和歌山店では青森県産地鶏のシャモロックを使ったあっさりスープベースのラーメンと各々違う個性を生かしたラーメンを提供することにより、顧客が双方の店に通うなど相乗効果を生んでいる。
開業前、サラリーマンであった夫の正志氏は、自身の強い“ラーメン愛”から休日を利用しては完全独学で自宅倉庫にてスープの研究を重ねていた。創業当時は生活のことも考え、正志氏は経営が安定するまではサラリーマンを続けることにし、介護職に従事していた妻の晴代氏が代表になった。今ではお互いの強みや経験を活かし、ラーメン作りは正志氏、経営面は晴代氏、と上手く役割を分担して運営している。
左:濃厚鶏SOBA 中央:軍鶏ロック中華そば 右:御坊店の店内

2店舗を経営するという大きな課題

「濃厚鶏白湯」という今まで当地になかったラーメンを提供している御坊店は、ローカルテレビ番組に取り上げられたことをきっかけに、認知度が上がりリピーターも増えていった。御坊店の開店から6年後に和歌山店を開店したが、和歌山市は全国的に知名度の高い醤油豚骨ベースの和歌山ラーメンを目当てに県内外からの来訪者が多く、和歌山ラーメンという強力な地元ブランドとの競合に直面した。そうした状況の中、和歌山店でも限定的に濃厚鶏白湯スープのラーメンを提供し、両店舗で正志氏の探求心から生まれる限定ラーメンを定期的に展開。さらにInstagramを通じた継続的な情報発信により、「ramen BIRDMAN」のファン獲得に努めている。「新しいラーメンの構想が次々に浮かんでくるんですよ」と楽しそうに話す正志氏と、「新作は全て味見をしていますが、ほとんど美味しいんです」と笑顔で話す晴代氏。夫婦二人三脚で試行錯誤を重ね歩んできた軌跡が伺えた。
顧客が増える中で、創業当初からの味にこだわり抜いた結果、準備可能なスープ量では足りずスープ切れにより顧客に提供できない日も増え、 機会損失を感じるようになった。対策としてスープの量が減らないよう火加減を弱める試みも行ったが、結果として味が薄くなり、品質維持ができない。「安定的にスープを提供する」という大きな課題に直面した。
顧客の増加に対応できるスープ量を確保するため、正志氏はスープ作りに専念し、その品質を保ちながら安定的に提供ができるようにセントラルキッチンを造ろうと思い立った。

構想はできたが具体的にどうすればいいのか~相談する先はいつも商工会議所

経営に関する悩みは、居酒屋を経営する知人の紹介で知り合った御坊商工会議所の佐藤経営指導員に相談している。佐藤経営指導員には、創業時の創業計画作成に始まり、経理記帳や収支計画、従業員雇用、新たな取組みなど何でも相談しているという。
今回のセントラルキッチンの構想についても、佐藤経営指導員に相談したところ、飲食店の設備改装に利用できる補助金があると、「小規模事業者持続化補助金」の提案を受けた。少しでも資金負担の軽減ができるのであればと考え、補助金活用を決断した。

佐藤経営指導員からの補助金提案と計画書作成の助言サポートが、セントラルキッチン構想の大きな後押しとなった。佐藤経営指導員は、何が補助対象として申請できるのか一緒に検討し、計画書の構成や方向性など丁寧に 説明してくれた。はじめて補助金申請に挑戦した晴代氏は、「セントラルキッチンの導入は今後の事業展開には欠かせないため、 必ず導入するぞ、という思いでした。補助金申請は何をどうすればいいのかわからず大変でしたが、佐藤さんが親身に相談に乗ってくれたおかげで、事業計画に自信をもって申請できました」と話してくれた。
 
創業当時、佐藤経営指導員は、御坊店の開業に対して積極的ではなかったという。「立地条件が悪く、競合店も多く、駐車場もなかったので厳しいと思うと話をしました。それでも本人達の“今やりたい”という気持ちが強く、経営者としての心構えをもってもらいたいと、晴代さんに創業スクールへの参加を勧めました」と振り返る。
代表になった晴代氏には、「これから経営者になるのだから、経理はもちろんのこと、収支や利益などは晴代さん自身が管理していくのだ」と伝え、様々な面でサポートしていった。晴代氏もまた、「佐藤さんがいなかったら創業できなかった」と話している。このような継続的な相談支援体制が「ramen BIRDMAN」の創業と成長を支えている。
 
補助金を活用して導入したレンジフード・大型コンロ
業務用冷凍庫

「ramen BIRDMAN」ブランド確立へまた一歩

補助金が採択され、セントラルキッチンという新たな体制へのシフトが実現した。セントラルキッチンで店自慢の鶏白湯スープの品質が保て、スープの冷凍が可能になり2店舗分の量も安定的に提供できるようになった。また、Instagramでの継続的な情報発信の効果もあり、今では補助金申請時の計画を上回る売上が実現できている。
 
「ramen BIRDMAN」は既に次の展開へと動き出している。御坊店は2025年7月に国道沿いの店舗へ移転し、和歌山店は従業員へのれん分けの形で譲る。新店舗は現店舗よりおよそ2倍の広さで、駐車場も十分確保できる場所である。Instagramでのフォロワーも増えてきたため、県内外からの集客がしやすい環境に移転したいと決断した。現店舗に徒歩でこられる方が来店できる場所でもある。濃厚鶏白湯とあっさりシャモロックそして限定ラーメン全てが提供でき、セントラルキッチンの機能も有する店舗である。正志氏は「自分の自信のある全てのラーメンをひとつの場所で提供したい。その中でまた新たなものが生まれたらいいなと思っている。拠点を集約することで、材料などのロスも軽減できると考えている。」と話してくれた。店舗の家賃も上がる等チャレンジの部分は大きいが、ラーメンの品質は一段上を目指せるだろう。 
 
持続化補助金の活用をきっかけに、セントラルキッチンという新たな体制が実現できたことは、晴代氏、正志氏にとって次のチャレンジへ向かう自信にも繋がっている。将来的には自慢の鶏白湯の仕込みを教え、かえしを提供できる体制が整えば、小規模でいいのでフランチャイズ化してみたいと話してくれた。
ラーメン愛が強く職人肌の夫と、経営面をしっかりとサポートしてくれる妻の二人三脚の「ramen BIRDMAN」の次の展開が楽しみである。
活用した補助金:小規模事業者持続化補助金
年度:令和3年度補正予算 第10回
 枠・型:一般型

※本ページに掲載している補助金活用事例は過去の補助制度によるものであり、現在の補助制度とは異なる場合があります。
 最新の補助要件については、必ず公式情報をご確認ください。

企業データ

企業名
ramen BIRDMAN
設立
2014年7月
従業員数
3名
代表者
中村 晴代 氏
所在地
和歌山県御坊市薗73-1(新店舗)

支援機関データ

支援機関名
御坊商工会議所
所在地
和歌山県御坊市薗350-2

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