2026.01.13
- 建設業
- IT導入補助金
地域支援機関とともに生産性向上に取り組む企業事例(株式会社橋本店)
建設業の業務効率化を実現する点群処理ソフト導入事例とIT活用の成功ポイント

この記事のポイント
- 外注業務の内製化を検討
- 支援事業者とともにニーズに合うソフトウェアの検討
- 大幅なコストカットと業務効率化を実現
株式会社橋本店は、宮城県仙台市に本社を置く建設会社である。明治11年に創業し、140年余りの歴史を持ち、創業当初から仙台市で事業を展開してきた老舗企業である。現在は、10代目の武田代表取締役社長が会社を率いており、宮城県内を中心に、土木工事や病院や役所などの官公庁発注の施工案件、さらに民間発注の施工案件まで幅広い領域で事業を展開している。また、同社のホームページを見るとシンボルマークの「クジラ」が目を引く。
同社によると「クジラは環境に合わせて、自分の体の形や陸・海といった生活の場を変えながら進化してきた。将来は空を飛ぶこともあるかもしれない。」このような進化の在り方に着目し、同社も現状に甘んじることなく、常に新しい考えで変化できる会社を目指すことをブランドコンセプトにしている。

マクロ(社会全体)とミクロ(社内)の観点で課題を正確に把握する
数年前までは、社会全体がコロナ禍の影響を受け、さまざまな業種で営業停止などを余儀なくされ、経営が苦しくなる企業も多く見られた。橋本店では、コロナ禍による発注数の落ち込みはそこまでなく、事業は安定して継続できていた。しかし、建設業界全体としては、人手不足や資材費の高騰、ドライバー不足による輸送の問題など、他社同様に解決が急がれる課題を抱えている。
一方、社内に目を向けると、以前から測量作業や土量計算に多くの時間を費やしており、とくに点群処理(スキャナー等で撮影した地形等の点群データをつなぎ合わせて3Dモデル化する処理)といった専門的な作業は、外部の測量会社に委託することが常態化していた。外注した際の作業日数や費用面などを考慮すると、点群処理の業務を内製化できれば、コスト削減や作業時間の大幅な短縮に繋がり、より迅速な現場運営が可能になることは認識できていたものの、利用するソフトウェアの導入や人材等の都合上、外注に出さざるを得ず、内製化の取り組みを先送りとしていることが課題だった。
自ら動くことで課題はチャンスに変えられる
こうした中、同社ではさまざまな業務の効率化に対する意欲が高まり、「業務効率推進課」という専属チームを立ち上げ、本格的な社内業務のIT化や効率化に取り組むこととなった。
そこでまず焦点になったのが、前述した点群処理である。点群処理が可能な点群処理ソフトは多くのメーカーから販売されているが、同社単独でソフトを導入するにはやや負担が大きいと感じていた。そこで、設備関連で10年来の取引があり、親身なサポートでも信頼していたリコージャパン株式会社(以下「リコージャパン」という)に点群処理ソフト導入の相談を持ち掛けた。
リコージャパンは建設業に限らず、幅広い業種向けにソフトウェアを扱っており、同社が求める点群処理の内製化に適したソフトウェアも複数取り扱っていた。同社のニーズを踏まえ、リコージャパンから具体的な導入例やソフトウェアの説明を受け、両社で検討した結果、最終的に一つの点群処理ソフトを選定した。
また、相談の過程で、IT導入補助金の活用についてリコージャパンから提案を受け、同社としても導入費用の負担軽減につながると考え、補助金の申請準備を並行して進めることとした。IT導入補助金の申請は、WEB上で必要項目の入力と証憑の添付が必要になるが、リコージャパンの丁寧なサポートがあったことで、とくに苦労することもなく、スムーズに手続きができたという。
自社対応によって得られる現場力と柔軟性
点群処理ソフトの導入により、当初の狙いどおり、点群処理の内製化を実現することができた。この成果は、同社にとって目に見えて非常に大きいものだ。特にコスト面では、その年によって差はあるものの、年間で数千万掛かっていた外注費用を削減することができた。
測量作業自体も従来2~3日かかっていたものが、ドローンと点群処理ソフトの活用により、半日から1日程度で完了するようになり、労力も削減できている。さらに、撮影した写真をソフトウェアに取り込み、点群データとなったものを編集することで、土量計算にも活用できる。そうすることで複雑な盛り土作業等におけるスペースや土量の確認作業の効率も飛躍的に向上した。こうした施工前の作業が効率化されたことで、次の段階である現場打合せまでの時間も短縮され、総体的に業務のスピード感も向上した。ソフトウェアを活用したことで帳票データの共有も簡単になり、従業員間の情報連携もしやすくなった。
また、ソフトウェア導入時のレクチャーやその後のヘルプ対応などもリコージャパンやメーカーのサポートが充実しており、導入初期に操作を覚える点に多少苦労をした程度で、利用するうえでの大きな問題は無かったという。

ソフトウェアの導入を検討するうえでは、どのような効果が期待できるのか、導入後に業務がどのように変化するかをしっかりイメージすることが重要である。同社の例は、外注業務の内製化によって、コスト削減や業務効率化、そして今後の業務の可能性を拡げる取り組みとして、非常に分かりやすいモデルケースと言える。
今後もIT化や業務効率化の歩みを止めない
同社は、新設した業務効率推進課を中心に、今後も新しい技術の導入や生産性向上に積極的に取り組んでいく方針だ。競合他社も多い業態の中で、日常の細かな業務に対するIT技術の活用は、競争優位性を確立するうえでも必要不可欠である。
本事例のように、経営層が現場のニーズを正しく把握し、企業方針を現場に反映することで、現場が新しい取り組みにチャレンジしやすい環境を作っていく。そうしてIT技術の恩恵を最大限に引き出していくことが、今後の持続的な成長に繋がるだろう。
企業データ
- 企業名
- 株式会社橋本店
- 設立
- 1878年
- 従業員数
- 193名
- 代表取締役社長
- 武田 文孝 氏
- 所在地
- 仙台市青葉区立町27番21号







