2024.10.24

生産性向上に取り組む企業事例

“お客様とともに” IT導入で築く事業基盤と地域活性化への取組み【IT導入補助金活用事例】

代表取締役 人見 允教 氏
代表取締役 人見 允教 氏

ポイント

  • 事業計画は数十年先をしっかり見据えて策定
  • 計画的な設備投資に伴うITベンダーとの連携と補助金活用で成果を創出
  • 自社のみならず地域単位でのイノベーションを意識した積極的な取り組み

 京都府の中西部に位置する亀岡市は京都府の観光地としてもお馴染みだが、加えて2020年にはサンガスタジアム by KYOCERAが建設され、観光地として更に魅力的な町となっている。星和電機工事株式会社は、亀岡市を中心に公共施設や医療福祉施設、工場施設、教育施設、商業施設など様々な施設の電気工事を担う地域に根差した企業である。

父からの事業承継を機に転身、新たな分野への積極的なチャレンジ

 同社は創業以来、”誠実・迅速・丁寧な施工”を経営理念とし、非常に多種多様な施設の施工実績を有している。その実績を聞くと、市内の入札案件などへの積極的な参加に加え、新規取引先や創業当初から培ってきた取引先との信頼関係による仕事等、堅実な姿勢と新しいことにチャレンジする企業精神をうかがい知ることができる。
「この業界は非常に閉じた世界ですから、経営者同士の横の繋がりも非常に重要です。社会的に人手不足と言われていますが、この業界も本当に人手不足。案件によっては人手が足りないこともありますから」そう話してくれたのは、今回インタビューに応えてくれた2代目代表取締役を務める人見允教氏だ。先代は允教氏の父である人見徳次氏で允教氏は2019年10月から同社の代表取締役に就任している。

 人見允教氏は、代表取締役に就任するまで、京都・東京を拠点とする某大手衣料品メーカーに勤務していた。代表就任にあたっては、先代が築いた地盤があるとはいえ全く異なる業種への転身でもあったため、ノウハウが無いことによる社内外での苦労も非常に多かった。そのため、まずは先代が築いたコミュニティを軸に現場経験をしっかり積み、自身に知見を積み上げ経営者としての地盤をしっかり構築することに専念し今に至っている。代表就任以降は、本業である電気工事でしっかり利益を出すことを意識しながら、同社の課題解決に伴う補助金の活用や他業種との交流を目的としたイベントスペースの活用、電気の理論を活用したゲームの制作や子供の職業体験を積極的に実施する等、請負業以外での収益モデルを模索し、様々なことに挑戦している。

社屋外観
社屋外観

事業計画策定の中から見えた補助金活用の道

 多くの中小企業は、経営者が営業、現場、従業員管理、資金繰りなど何役もこなす必要があるため、目先の案件をこなすことだけに注力してしまい、設備投資や事業計画を練る時間がとれないことが多い。
しかしながら、同社の事業計画や人員計画・IT投資計画全般は、主に人見代表自身で策定しており、事業計画は数年先~20年先をスコープとして作成している。
 計画を練る中で直近課題の一つとして出てきたのが、細かな各業務のIT化だった。先代から受け継いだ事業自体はしっかりしたものだったが、各業務についてはアナログ部分が残っており、IT化の余地が多分にあった。そこで、まずは電気工事業において切っても切り離せない積算業務(資材単価などから施工金額等を割り出す作業)をIT化し、業務の効率化を図ることにした。
 「ITツールに限らず設備投資には費用がかかるので、活用できる補助金等がないか従業員とも協力しながら調べ、IT導入補助金を知りました。こういった制度を活用できるのは非常に助かりました。」と人見代表は話す。
 一方で、「ITツールの導入目的がはっきりしないまま導入するなど事業計画が甘いと、導入した設備を活用できず、結果的に負の遺産のような形で事業所に残ってしまう。まずは何がやりたいのかを明確にし、そこから活用できる補助金を調べ、IT導入補助金の活用を前提に商談・協議を重ね、実際に営業で来てくれていたITベンダーから土木積算システムの説明を受け、機能的にも申し分ないことを確認して購入することとした。」と当時を振り返る。

ITツール導入で見えたITベンダーとの連携やその成果

導入したITツールを活用する社員
導入したITツールを活用する社員

 実は、同社が補助金を活用するのはIT導入補助金が初めてではない。同社のホームページ作成についても別の補助金を活用しているという。
 「弊社のホームページも補助金を活用させてもらいましたが、デザイン以外のや内容は自身で全て考えました。そういう意味では、外部の方にお願いすることは少なかったですね。一方で、IT導入補助金はツールの選定から導入時や導入後もITベンダーのサポートが必要でした。ツール導入時は丁寧に導入研修を実施してくれたことで、利用に際してのトラブルや混乱はほとんど無く、導入後も新規配属の者がいれば、その都度使い方を教えてもらえるような状態になっています。」とIT導入支援事業者の必要性を人見代表は語る。
 「ソフト自体は非常に使いやすくて、ツールを導入した後、入札案件に対して見積の精度が高まり、数件追加で受注することができました。積算ソフトはとにかく正確性が重要ですが、このソフトはデータも最新のものを維持してくれますし、積算も正確で簡単なので非常に助かっています。また、IT化されたことで当該業務に対する従業員の負担も減り、他のことに注力してもらうことも可能になるため、そういった意味でも効率化されています」と
事業計画と費用のバランスを見ながら、IT化を推進することとしている。

自社の領域に固執しない、イノベーションへの想い

代表取締役 人見 允教 氏
代表取締役 人見 允教 氏

 人見代表は他業種との交流や町の活性化についても様々な取り組みを行っている。
「若い人達が企業とか町に魅力を感じなかったり、アイデアを持っている人達がそのアイデアを共有したり形にできる場がないというのも人が離れていってしまう一つの要因だと思っています」
 こう話す人見代表は、最近では同社の一画にイベントスペースを開設し、アイデアを持つ人達を集めて交流できる場を設けた。他にも製造過程で出る通常は廃棄されてしまう資材を利用したリサイクル品製作の検討や、もっと大きなシェアスペースの開設などの計画にも積極的に取り組んでいる。
 「まずは本業でしっかり利益を出し、会社自体の魅力を作っていくことが重要ですが、それとは別の視点で町自体が発展しなければ今取れている仕事も先細りになってしまいますし、採用しようにもできなくなってしまいますから、若い人達がアイデアをどんどん生み出していける場を作って町を活性化できたらなと思っています。そういった事業の中でまた活用できる補助金等があれば活用したいですね」

今後も前向きな補助金の活用とともに、自社だけではなく地域単位での活動にも貢献する取り組みに期待したい。

企業データ

企業名
星和電機工事株式会社
Webサイト
https://seiwa-dk.co.jp/
設立
1984年10月16日
従業員数
8名
代表取締役
人見 允教 氏
所在地
京都府亀岡市荒塚町1-3-14

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