2026.01.29
- 宿泊業,飲食サービス業
- 持続化補助金
地域支援機関とともに生産性向上に取り組む企業事例(合名会社牡丹荘)
伝統の味を守りながら補助金活用で改革実現!~老舗中華料理店の挑戦

この記事のポイント
- 老舗中華料理店が補助金を活用して厨房改革、売上も効率もアップ
- 商工会議所経営指導員との出会いで漠然とした悩みが“行動”の変化へ
- 災害もコロナも追い風に、町の人気店が進化を遂げる
長野県千曲市にある老舗中華料理店「牡丹荘(ぼたんそう)」が、補助金を活用して設備導入・業務効率化などを実現し、老舗の味を守りながら地域での支持をさらに高めてきた事例を紹介する。商工会議所経営指導員の支援を受け、事業者が課題を整理し、補助金を活かしてどのように行動変容に至ったかを紹介する。
昭和から続く味と心、千曲市の名店『牡丹荘』
「牡丹荘(ぼたんそう)」は、長野県千曲市にある老舗中華料理店で、この地域で最初に『担々麺』を提供したと言われている。地元で牡丹荘といえば『担々麺』と思い浮かぶほど看板メニューとして長年愛されている。
この『担々麺』は先代である父が事業を引き継いだ頃、東京の有名中華料理人の弟子が同店で中華料理を指導してくれた際に伝えられた味を、今も受け継いでいるという。
牡丹荘の歴史は長く、昭和20年代に現千曲市戸倉上山田温泉で、先代である父の叔父が営んでいた中華料理店を先代が買い取り、中華大衆食堂として開業したことに始まる。その後、昭和50年4月頃に現在地に移転し、「有限会社牡丹荘」として法人化した。平成に入り長野市内に2号店も構えた。
令和元年5月には、先代が事業を承継するのを機に分社化を行い、千曲市にある本店は「合名会社牡丹荘(当該事業所)」として兄が、2号店は「有限会社牡丹荘」として弟が承継した。
現在、合名会社牡丹荘の代表社員である宮下勝行氏は、日本料理店での修行経験も持つ。中華のノウハウに和のテイストを融合させ、伝統の味を守りながら、中華料理や定食・麺類に加え、宴会料理まで幅広く提供しており、地域の“顔”とも言える存在である。
その姿勢と味は、親子二代にわたり地域の幅広い層に支持されている。
「このままではいけない」老舗を襲った壁と苦悩
老舗としてのブランド力はあるが、それに奢らず牡丹荘は常にチャレンジを続けている。
分社化前から持続化補助金を活用して、当時の小規模飲食店では珍しいスチームコンベクションオーブンを導入。伝統の味を守りながら、最新の機器を取り入れることで、大量調理等業務の効率化を実現していた。
代表社員の勝行氏が事業を承継してから半年後の令和元年10月、牡丹荘は東日本台風の水害に見舞われた。店舗は膝下ほどの浸水があり、床暖房設備や厨房機器がほぼ壊滅状態という大きな被害を受けた。地元の事業者やボランティアの力を借りて2週間ほどで一時的な営業は再開できたものの完全復旧には多大な労力と時間がかかったという。
さらに追い打ちをかけたのがコロナ禍による外出自粛と来店者数の減少である。「牡丹荘」も例外ではなく、来店客は途絶え、売上も立たない日が続き、チラシを作り家族でポスティングを行うなど懸命な対応を続けたが、本格的にテイクアウト対応するにはどうすればいいのかなど、様々な課題を解決できないでいた。
こうした厳しい環境の中で、勝行氏は「このままではいけない」「変わるための手段を考えなければ」と変革を強く意識するようになっていった。
「やりたいことを実現したい」
事業者の想いに寄り添う支援者との出会い
牡丹荘は、先代の時から千曲商工会議所との繋がりがあり、持続化補助金の活用実績もあった。
千曲商工会議所の宮沢経営指導員による本格的な支援が始まったのは、勝行氏が事業を承継して間もない頃であった。
令和元年東日本台風被災時には、復旧支援や関連制度活用サポートを始め、きめ細やかな支援が行われたという。勝行氏は「宮沢さんや会議所の皆さん、地域の仲間の事業者やボランティアの皆さんのサポートがなければ事業をやめていたかもしれない。」と当時を振り返る。
持続化補助金申請の際に宮沢指導員は、勝行氏の頭の中にあった思いや悩みを丁寧に聞き取り、それを事業計画という形で整理していった。補助金申請に必要な書類作成や申請手続きについても、わかりやすく説明し、採択後のフォローまで一貫してサポートしている。
宮沢指導員との対話を通じて考えが整理されていく中で、勝行氏は「自分の考えが整理され、うちの強みや課題が改めて見えてきた」と感じたという。
一方、宮沢指導員は、「事業者の皆さんには、通常では聞くことのできない会社や事業のことを教えてもらっていて感謝しているんです。牡丹荘さんにしても厨房機器や食材、仕入や取引のことなど沢山勉強させていただいてるんです。」と話してくれた。
宮沢指導員の存在は、牡丹荘にとってまさに「やりたいこと」と「どうすれば実現できるか」を繋ぐ橋渡し役である。勝行氏の前向きな気持ちに寄り添いながら、着実な一歩をともに踏み出す存在となったのである。
「変わるための一歩」
補助金活用で描いた理想の厨房とサービス像
勝行氏の中にはかねてから、「調理を効率化して味を守りつつ安定的に料理を提供したい」「テイクアウトをしっかりと展開したい」という明確な思いがあった。
こうした構想を胸に、支援者との相談を重ねる中で、「補助金を活用して資金的なハードルを下げることにより実現への道が開ける」という可能性が見えてきたという。
そこで補助金を活用して導入したのが、スチームコンベクションオーブンや餃子焼き機、餃子製造機である。これらの設備により、チャーシューの低温調理や、宴会料理・大量調理の時間短縮が可能となった。また、新たに雇い入れた従業員も即戦力として活躍できる厨房環境が整い、従業員の負担軽減にもつながっている。
補助金という手段は自身の構想を具体的に形にする強力な後押しとなったのである。
被災直後に迎えたコロナ禍の際は店の営業は一層厳しい局面を迎えた。「このままでは耐えるだけの経営になってしまう。変化しなければ生き残れない」—そうした危機感が、勝行氏の決断をさらに後押しした。
その結果、補助金を活用し、ラーメンのテイクアウト実現に向けて真空包装機を導入したほか、非接触化と業務効率化を目的にハンディターミナルやPOSレジを整備した。近年では、IT導入補助金を活用し、席で注文できるタブレット型の注文システムを導入している。これにより、店全体のオペレーションが劇的に変化した。
これらの取り組みはすべて、勝行氏自身の「こうしたい」という明確なビジョンと、それを支える支援があったからこそ、実現に至った取り組みであった。こうしたチャレンジを続けることにより、今では承継時やコロナ禍当時と比べて売上は倍以上になっているという。
補助金は単なる設備導入の手段にとどまらず、変化を起こすための“最初の一歩”を後押しする力となったのである。
「次の世代へ、地域と共に」老舗店の未来を見据えた挑戦

勝行氏はこれからの展望について、「地域の人たちの集いの場として、これからもこの店を使ってもらえるようにしたい」と語る。たとえば、帰省してきた人が「変わらない味がここにある」と感じられるような、そんな“地元の味”を守り続けたいという想いがあると話してくれた。家族や友人が気軽に集まれる場所として、地域に根ざし続けることが「牡丹荘」の目指す姿であると。
その一方で、新しい取り組みにも積極的で、新たな飲食ニーズに応えるためのもの。変化するお客様の嗜好に柔軟に対応しながら、店の魅力をさらに高めていこうとしている。
さらに、今後は人材育成や経営基盤の強化にも注力する考えだ。従業員・アルバイトの賃上げにも前向きに取り組み、若手の育成にも力を入れる。すでに後継者である息子も店に加わっており、親族内承継を見据えた経営へシフトしていきたいと考えている。
「強みをつくって、次の課題を見つけて、またチャレンジする」と語る勝行氏の姿には、地域と共に歩み、老舗の価値を未来へと繋いでいく強い意志が滲んでいた。
| 活用した補助金:小規模事業者持続化補助金/(IT導入補助金) |
| 年度: 平成30年度第2次補正予算(一般型) 令和元年 台風19号型(被災型) 令和元年度補正予算(一般型)第6回 令和2年度補正予算(コロナ特別対応型)第3回 令和4年度補正予算(一般型)14回 |
※本ページに掲載している補助金活用事例は過去の補助制度によるものであり、現在の補助制度とは異なる場合があります。最新の補助要件については、必ず公式情報をご確認ください。
企業データ
- 企業名
- 合名会社牡丹荘
- 設立
- 2019年5月29日
- 従業員数
- 3名
- 代表者
- 宮下 勝行 氏
- 所在地
- 長野県千曲市杭瀬下4丁目15番地
支援機関データ
- 支援機関名
- 千曲商工会議所
- 所在地
- 長野県千曲市杭瀬下三丁目9番地







