2026.01.20
- 宿泊業,飲食サービス業
- 持続化補助金
地域支援機関とともに生産性向上に取り組む企業事例(株式会社ナチュラルコーヒー)
「もう売上は伸ばせない」壁を越えた地方カフェの挑戦

この記事のポイント
- 社名に込められた「自然素材へのこだわり」と創業の想い
- 熊本市北部商工会の支援と補助金活用で課題を解決
- 従来の飲食店の枠にとらわれず、新たな販売戦略への挑戦と決意
有機栽培作物や自然なものに関心を持っていた先代・清田氏は、有機無農薬コーヒーを初めて飲んだ際、その強い生命力に感動し、「この思いを多くの方々に知ってもらいたい」との想いから、1994(平成6)年に株式会社ナチュラルコーヒーを設立した。
2002(平成14)年には、現在の代表取締役である益田聖司氏が入社。益田氏は市内のホテルで20年以上に亘り料理人として活躍し、自然食材に強いこだわりを持ちながら料理人としてのキャリアを積み重ねていたこともあり、株式会社ナチュラルコーヒーの理念に強く共感した。
コーヒー豆の通信販売事業から始め、やがて地域の人気店として定着。現在では全国に「スリランカカレー」の愛好者を抱える存在となっている。その歩みについて、益田氏に聞いた。
自然素材へのこだわりがたどり着いた店舗という新たな挑戦
「イヴァンさんのコーヒー」
益田氏の入社前から、同社はブラジルで有機栽培コーヒー豆を育てている現在の契約農家との繫がりを持ち、「安心安全」をコンセプトに直輸入を開始、自家焙煎コーヒーの全国販売を行っていた。
2016(平成28)年、益田氏は先代から代表取締役を引き継いだが、同年に熊本地震が発生。震災直後の混乱の中で、「少しでも安らいだ気持ちになってもらえたら」との思いから、近隣住民に無料でコーヒーを振る舞った。
その際、涙ながらに「ありがとう」と何度も感謝されたことが大きな励みになり、2017(平成29)年、「地域の憩いの場」を理念に掲げ、これまで続けていたコーヒー豆の通信販売に加え、自家焙煎コーヒーやカレーを提供する念願の店舗をオープンした。
“本物の味”を追求したコーヒーとスリランカカレーの両輪
コーヒー豆の通信販売は、生産地からコーヒー豆を直輸入し、焙煎、加工、梱包、発送まで一括して自社で完結させている。さらに、焙煎工程のすべてのデータを記録することで、高品質の維持を徹底している。
一方、店舗ではお客様の85%、月に1,000人以上が注文する看板メニュー「スリランカカレー」が高い人気を誇っている。
スリランカカレーを提供する店は他にもあるが、同店のカレーは他店では決して真似できないオリジナルな味に仕上がっている。
その理由は、かつて勤務していたスリランカ人スタッフの親族が、現地でスパイス製造会社を経営しており、そこに当店秘伝の独自配合を指示し、製造されたスパイスを直輸入し、さらに日本人の口に合うようにアレンジして作るこだわりの逸品だからだ。

テイクアウト化への挑戦と挫折、理想の味に届かなかった現実
創業以来続けているコーヒー豆の通信販売部門は、全国に約2,000人の顧客を抱えている。
しかし、円安やコーヒー豆生産地の気候変動の影響により、創業当初と比較すると仕入価格は約2倍に高騰したことに加え、卸売先の飲食店の閉店が相次いだことも重なり、今後の売上増加は厳しい見通しであった。
一方、飲食店部門では店舗の収容可能客数が24名で、人気店であるが故にランチ時には瞬く間に満席となってしまう。
店舗の駐車場で待つ客は最大20名前後まで膨れ上がり、30分以上待たせてしまうことも珍しくなく、中には諦めて帰る客もおり、大きな機会損失が生じていた。
こうした課題を解決するため、店舗で飲食できない場合でも自宅で当店の味を楽しんでもらえるよう、「スリランカカレー」のテイクアウト用レトルトパックを製造会社に委託する形で試してみたが、スパイスは自社で提供したものの、製造上のさまざまな制約があり、本来の味を再現することができず、やむなく断念するという苦い経験を味わった。

もっと多くの人に届けたい、支援機関と進めた冷凍化プロジェクト
「スリランカカレー」を店舗で提供するだけでなく、もっと多くの方々に味わってもらいたい、その純粋な想いを成就するため、益田氏はさまざまな方法を模索していた。
そんな折、「コロナ禍の頃、近隣の飲食店で人気メニューを冷凍パックにして販売している様子を目にしたことを思い出した」と益田氏は話す。
「スリランカカレー」を自社店舗で真空パックし冷凍保存すれば、店舗で提供する味をそのまま再現しギフトやお持ち帰り商品として販売できるのではないか。益田氏はこのアイデアの実現に向けて、熊本市北部商工会に相談することを決めた。
以前から商工会からのイベント開催の案内を受けていたほか、益田氏の同級生が熊本市北部商工会の青年部に所属していたこともあり、馴染みがあったためだ。
益田氏にとって、支援機関等への相談は初めてであり、補助金の申請を考えたこともなかった。
しかし、熊本市北部商工会で担当となった栗本香織経営指導員に事業アイデアを一から丁寧に話したところ、「持続化補助金に申請したらどうか」と提案を受けた。
料理人としての長年の経験から、導入すべき機械はすでに見当がついており、設備導入後の販売目標などの計画をあらかじめ作成したうえで熊本市北部商工会に相談した益田氏だが、「過去にレトルトパックでの販売計画が頓挫したこともあったが、今回は栗本経営指導員から第三者目線で適切な助言をもらえて、非常にありがたかった。栗本経営指導員は過去の採択事例を豊富に把握しており、計画書の書き方だけでなく、数字面での具体的算出まで踏み込んだアドバイスは大変参考になった。初めての補助金申請で大変なことが多かったが、栗本経営指導員の励ましが大きな支えとなり、自信にも繋がった」と述べている。
一方、栗本経営指導員は、「益田氏のアイデアや事業計画は当初から完成度が高いと感じていたため、より良い内容を目指すことを心掛け、とにかく益田氏の話を丁寧に聞くことに徹し、適宜、助言を行った。益田氏が多忙なこともあり、メールなども活用しながら、何度も何度も意見交換を行った」と振り返る。
こうした栗本経営指導員の適切な助言と、それをもとに益田氏自身が当初の計画を大幅にブラッシュアップした結果、2024(令和6)年、持続化補助金に採択された。
「スリランカカレー」の冷凍販売を実現、金賞受賞と売上4倍の成果
持続化補助金の採択により、「スリランカカレー」を自社店舗で真空パックするための真空包装機、その真空パックを急速冷凍するための急速冷凍機、そして販売用「スリランカカレー」を並べる卓上型冷凍ショーケースを導入することができた。
真空パックすることにより、店舗で提供する「スリランカカレー」と同等の風味を維持することが可能となった。
また、急速冷凍機を導入したことで、これまで半日ほど要していた冷凍作業が、約2時間で完了するようになり、販売用「スリランカカレー」製造可能量は導入前と比較し2~3倍に増加。さらに、賞味期限も最大3ヶ月まで伸ばすことが可能になった。
店舗満席時の対応という課題に対しても、店舗外でお待ちになるお客様にこの販売用の「スリランカカレー」を提案することで、機会損失の低減につながった。
実際に、店舗で「スリランカカレー」を注文したお客様が、家族や友人にも食べさせたいと購入してくれる場合も多いという。
さらに、販売用の「スリランカカレー」は2025(令和7)年7月、ジャパン・フード・セレクションの第89回 食品・飲料部門において金賞を受賞した。本格的な「スリランカカレー」の味を冷凍食品で味わえることなどが高く評価された結果である。
この受賞を機に、販売用「スリランカカレー」の売上は従来の約4倍にまで増加。「想定以上の反響があり驚いたものの、まだまだ対応可能なレベルでした」と益田氏は笑顔で語った。

物販への本格展開を決意、補助金がもたらした思考の変化
今回の持続化補助金申請は、直接的な効果にとどまらず、益田氏の考え方にも影響を与えた。
「料理人としての経験が長いからこそ、飲食店の限界や弱みを認識している。今後も飲食店として持続可能な経営を目指すためには、新たな商品を開発・製造し、物販にも注力することが必要だと常々考えていた。
今回、持続化補助金が採択され、店内で外販用商品の製造拠点が出来たことで、これまでの考えを実行に移す決意が固まった。
持続化補助金申請にあたっては、自己流で計画を作成していたものの、栗本経営指導員から多角的な視点で助言を受け、自らブラッシュアップした。この経験を大切に活かしながら、今後の事業計画を作成したい。たとえ店舗を週1日休みにしてでも、販売用「スリランカカレー」の製造部門に注力していきたい」と益田氏は語った。
「ナチュラルコーヒー」の経営方針、すなわち「期待・満足・想像を超える商品・サービス作り」、「オリジナリティーある商品作り」、「安心安全な商品作り」を地道に実行してきた益田氏だからこそ、その熱い想いは近いうちに結実することだろう。
| 活用した補助金:小規模事業者持続化補助金 |
| 年度:令和5年度 第15回 |
| 枠・型:一般型 |
企業データ
- 企業名
- 株式会社ナチュラルコーヒー
- 設立
- 1994年10月
- 従業員数
- 6名
- 代表者
- 益田 聖司 氏
- 所在地
- 熊本県熊本市北区下硯川町1792‐12
支援機関データ
- 支援機関名
- 熊本市北部商工会
- 所在地
- 熊本県熊本市北区鹿子木町151‐1







