2025.04.28
- 生活関連サービス業,娯楽業
- 持続化補助金
支援機関とともに生産性向上に取り組む企業事例(BCPボディケアサロン)
体の痛みに寄り添いながら成長を続けるリラクゼーションサロン

ポイント
- 高齢者や自身の体の不調に直面することで起業を決意
- 補助金を活用しながら客単価と集客の課題に取り組む
- 経営指導員の支援を受けさらなる事業基盤強化へ挑戦
厚生労働省や民間の調査によると、高齢者のうち体の痛みを抱えている方の割合は約4割に上るとされている。症状で多いのは肩、腰、ひざの不調。「BCPボディケアサロン」は、こうした肩こり・腰痛・四十肩などのつらい痛みに、ローラーで全身を転がして血流を正常化する「ローリング療法」でアプローチするリラクゼーションサロン。結婚後は役所や会社勤めが続いた藤原恭子代表は、そこでの経験を通して起業を決意し、補助金を活用しながら徐々に事業を拡大してきたという。
高齢者や自身の体の不調に直面し
問題解決のために自ら起業を決意する
藤原代表がこの世界に飛び込んだきっかけは、仕事を通じて高齢者の体の悩みに向き合った経験、それから自身の体の不調だったという。
藤原代表は出産を機に仕事から離れていたものの、当時住んでいた新潟県長岡市役所の仕事へ復帰。介護保険の開始に合わせて介護予防体操の先生の募集があり、応募した。
ところが復帰早々の2004(平成16)年に、最大震度7を記録した新潟県中越地震へ遭遇。隣接する旧・山古志村では全村避難指示が発令され、村民は長岡市で仮設住宅の生活を余儀なくされる。見知らぬ地での慣れない生活は引きこもりがち。そこで長岡市は高齢者を集め、そこへ派遣された藤原代表は一緒に体操やレクリエーションを行った。
「高齢者との話題に上がるのはいつも避難生活への不安と体の不調。辛い生活を送る皆さんの体の不調だけでも和らげてあげたいとの思いが募りました」
その後も夫の転勤に伴う転居が続き、市役所や水道局等の自治体での勤務を繰り返す。新潟市への転居を機に住居を構え、2019(平成31)年からは人間ドック施設で正社員として働くことに。藤原代表は体力測定や健康相談を担当することになった。
「高齢者との健康相談ではここが痛い、病院に行っても治らないといった悩みの声が多い。何とかしてあげたいとの思いはますます強まることとなりました」
そうした藤原代表自身を、突然の右足の痛みが襲う。
「座っても立っても激痛。生まれて初めての整体や鍼(はり)、マッサージ——。いろいろ試しましたが改善しませんでした」
そこで医師の診察を受け、付いた病名は腰椎すべり症。リハビリを始めたものの改善の兆しは見えない。「後は手術しかない」と言われたものの決断が付かず、悶々とした日々を過ごしていた。
痛みが治まらないまま半年以上が経過する中、SNSで見かけたのがローリング療法。わらにもすがる思いで東京へ足を運び、施術をしてもらうことに。
「終わった後は久しぶりに駅への階段を歩いて上ることができ、ようやく希望の光が見えたと思いました」
しかし、都内への通院は負担が大きい。そこで整体院の先生から勧められ自身で施術できるよう勉強を開始。2023(令和5)年に資格を取得し、会社員を続けながら副業でサロンを開業するに至った。


補助金を知って事業の本格展開を決意
自ら事業計画を作成して採択へ
自宅を活用し、子供の進学で空いた部屋を改装して開業したものの、定年退職したら本格的に事業展開しようと考えていたため、開業時の設備・機器は最小限で施術メニューも限られていた。そうした考えが変わり、本格展開を決意したのは小規模事業者持続化補助金の存在を知ったことだった。
「友人から補助金のことを教えてもらい、こうした支援策があれば機器を導入して施術メニューも増やせる。当時は商工会議所が支援してくれることを知らず、全部自分で考えて申請書を作ることにプレッシャーを感じましたが、とにかくチャレンジしてみようと考えました」
藤原代表が補助金の公募要領や参考資料等の文書を読むことに苦手意識がなかったことも後押しした要因だった。
「夫の転勤で各地を転々とした際、私は自治体で働くことが多く、要領や要綱を読む機会が多かったので多少慣れていたかもしれません。申請書や事業計画で求められていることを理解し、Webサイトの情報を参考にしながら何とか独力で完成させることができました」
その後、事業支援計画(様式4)の発行依頼のため新潟商工会議所を初めて訪問。その際は板垣洋暢経営指導員とは別の職員が対応したものの、補助事業計画に大きな修正もなく、様式4も速やかに発行され、受領。申請へと進むことができ、無事採択となった。そこで導入したのが水素吸入器と毛細血管モニター。施術メニューが増えると共に施術時間が延長し、施術単価の上昇へつなげることができた。
「友人から補助金のことを教えてもらい、こうした支援策があれば機器を導入して施術メニューも増やせる。当時は商工会議所が支援してくれることを知らず、全部自分で考えて申請書を作ることにプレッシャーを感じましたが、とにかくチャレンジしてみようと考えました」
藤原代表が補助金の公募要領や参考資料等の文書を読むことに苦手意識がなかったことも後押しした要因だった。
「夫の転勤で各地を転々とした際、私は自治体で働くことが多く、要領や要綱を読む機会が多かったので多少慣れていたかもしれません。申請書や事業計画で求められていることを理解し、Webサイトの情報を参考にしながら何とか独力で完成させることができました」
その後、事業支援計画(様式4)の発行依頼のため新潟商工会議所を初めて訪問。その際は板垣洋暢経営指導員とは別の職員が対応したものの、補助事業計画に大きな修正もなく、様式4も速やかに発行され、受領。申請へと進むことができ、無事採択となった。そこで導入したのが水素吸入器と毛細血管モニター。施術メニューが増えると共に施術時間が延長し、施術単価の上昇へつなげることができた。

震災で失った既存顧客を
補助金で広告を使うことで取り戻す
補助金採択の翌年、長岡市に住む藤原代表のご尊父が体調を崩し、藤原代表が介護を手伝う必要が出てきた。新潟で正社員を続けながら長岡で介護するのは無理があることから、会社を辞めてサロン一本に絞ることを決断した。
そうした藤原代表を襲ったのが2024(令和6)年の能登半島地震。新潟市は震源から離れているものの震度5強を記録し、藤原代表の自宅でもブロック塀の倒壊や家屋の基礎のひび割れなどの被害が発生した。しかし、それよりも影響が大きかったのはサロンの顧客の減少である。
「サロンはすぐに再開できたものの客足はばったり途絶えました。来なくなった方は市役所や水道局の職員、医療従事者で、いずれも震災対応で繁忙になったようです。お客さまを仕事での知り合いや紹介に頼っていたツケは大きく、これまで集客に力を入れて来なかったことを悔やみました」
2桁を超える減少率に戸惑う藤原代表の元へ届いたのが、小規模事業者持続化補助金(災害支援枠)の公募開始案内。
「1人でも多くのお客さまに当店を知っていただけるよう、生活情報誌への広告掲載やリスティング広告、パンフレット作成などへ使えないかと考えました」
思いの丈を込めて作成した申請書類を新潟商工会議所へ持参。そこで対応したのが板垣指導員だった。板垣指導員はその時の印象を以下の通り語る。
「事業計画書を拝見して、内容をしっかり考えて作られていることに驚きました。一方、おひとりで新潟と長岡を行き来しながら介護と事業を両立し、施術だけでなく広報に着手するのは大変で、実際に計画を実行するのは難しいと感じた。そこで、採択をゴールにするのではなく、集客や経営改善に向けた商工会議所の様々なサービスがご活用いただけるよう、商工会議所へ入ることをお勧めしました」
藤原代表は入会を即決。補助金も無事採択されたため、板垣指導員の助言を受けながら広告の内容を検討し、掲載にこぎつけた。広告の反響は大きく、広告掲載直後の売上高はこれまでの数十倍にも及ぶなど、震災前の売上高を軽々と超える水準を維持できるようになった。
そうした藤原代表を襲ったのが2024(令和6)年の能登半島地震。新潟市は震源から離れているものの震度5強を記録し、藤原代表の自宅でもブロック塀の倒壊や家屋の基礎のひび割れなどの被害が発生した。しかし、それよりも影響が大きかったのはサロンの顧客の減少である。
「サロンはすぐに再開できたものの客足はばったり途絶えました。来なくなった方は市役所や水道局の職員、医療従事者で、いずれも震災対応で繁忙になったようです。お客さまを仕事での知り合いや紹介に頼っていたツケは大きく、これまで集客に力を入れて来なかったことを悔やみました」
2桁を超える減少率に戸惑う藤原代表の元へ届いたのが、小規模事業者持続化補助金(災害支援枠)の公募開始案内。
「1人でも多くのお客さまに当店を知っていただけるよう、生活情報誌への広告掲載やリスティング広告、パンフレット作成などへ使えないかと考えました」
思いの丈を込めて作成した申請書類を新潟商工会議所へ持参。そこで対応したのが板垣指導員だった。板垣指導員はその時の印象を以下の通り語る。
「事業計画書を拝見して、内容をしっかり考えて作られていることに驚きました。一方、おひとりで新潟と長岡を行き来しながら介護と事業を両立し、施術だけでなく広報に着手するのは大変で、実際に計画を実行するのは難しいと感じた。そこで、採択をゴールにするのではなく、集客や経営改善に向けた商工会議所の様々なサービスがご活用いただけるよう、商工会議所へ入ることをお勧めしました」
藤原代表は入会を即決。補助金も無事採択されたため、板垣指導員の助言を受けながら広告の内容を検討し、掲載にこぎつけた。広告の反響は大きく、広告掲載直後の売上高はこれまでの数十倍にも及ぶなど、震災前の売上高を軽々と超える水準を維持できるようになった。
広告で集客したお客さまを逃さず
リピート獲得へつなげる
広告の威力を実感した藤原代表は、その後も補助金に頼ることなく、板垣指導員の助言を受けながら新聞の折り込みチラシ作りに取り組んでいる。
「先日作成したのは手書きのチラシ。他の業種の折り込みチラシを見掛けて、真似してみようと思った」
もちろん新規顧客獲得だけでなく、既存顧客のリピート獲得にも余念がない。
「当初は、初めて施術した方は半額、終了後すぐに次回施術の予約をした方は30%オフに設定しました。すると一時的に施術数は増えたものの長続きせず、客単価も下がっていることに気付き、これではまずいと思いました」
そこで、これまでオプションにしていた水素吸入を全コースに組み込んで価格体系を見直し。しかし値上げだけだとお客さまが離れてしまうため、割引を盛り込んだ回数券を同時に販売することにした。同時期にキャッシュレス決済を導入してクレジットカードでの購入を可能にすると回数券は飛ぶように売れ、お客さまのほとんどが購入されたという。
「これからも工夫しながらお客さまの良好な関係を維持していきたい」と藤原代表は語る。
「先日作成したのは手書きのチラシ。他の業種の折り込みチラシを見掛けて、真似してみようと思った」
もちろん新規顧客獲得だけでなく、既存顧客のリピート獲得にも余念がない。
「当初は、初めて施術した方は半額、終了後すぐに次回施術の予約をした方は30%オフに設定しました。すると一時的に施術数は増えたものの長続きせず、客単価も下がっていることに気付き、これではまずいと思いました」
そこで、これまでオプションにしていた水素吸入を全コースに組み込んで価格体系を見直し。しかし値上げだけだとお客さまが離れてしまうため、割引を盛り込んだ回数券を同時に販売することにした。同時期にキャッシュレス決済を導入してクレジットカードでの購入を可能にすると回数券は飛ぶように売れ、お客さまのほとんどが購入されたという。
「これからも工夫しながらお客さまの良好な関係を維持していきたい」と藤原代表は語る。
経営指導員と共に新たな売上の柱を検討
外部要因に左右されない安定した経営を目指す
新潟県は雪国のイメージがあるが、実は新潟市は地形的な条件から雪が少ない都市である。そうした中、2025(令和7)年2月は気象台が新潟県に「顕著な大雪に関する気象情報」を発表するなど記録的な大雪となり、新潟市の中心地でも50センチを超える積雪があった。一時は国道が除雪のため通行止めとなり、路線バスが運転を見合わせるなどの交通障害に見舞われた。
藤原代表は「雪が降るとお客さまが外出できなくなるため、施術の多くがキャンセルになりました。キャンセルは仕方ないものの、当店としては売上が計上できず厳しい。経営を安定させるためには実店舗での施術だけでは難しいということを考えさせられました」と振り返る。
「少額でもいいので、健康器具等の物販などオンラインで提供できる新たな売上の柱を立てることが次の課題です。板垣さんの協力を頂きながら一緒に考えていきたい」と藤原代表の目は次の展開を見据えている。
藤原代表は「雪が降るとお客さまが外出できなくなるため、施術の多くがキャンセルになりました。キャンセルは仕方ないものの、当店としては売上が計上できず厳しい。経営を安定させるためには実店舗での施術だけでは難しいということを考えさせられました」と振り返る。
「少額でもいいので、健康器具等の物販などオンラインで提供できる新たな売上の柱を立てることが次の課題です。板垣さんの協力を頂きながら一緒に考えていきたい」と藤原代表の目は次の展開を見据えている。

企業データ
- 企業名
- BCPボディケアサロン
- 設立
- 2023年
- 代表者
- 代表 藤原恭子氏
- 所在地
- 新潟県新潟市中央区
商工会議所データ
- 商工会議所名
- 新潟商工会議所