2023.02.24

東北福祉ビジネス株式会社

「福祉はチーム!」ITを導入して高まる結束力【東北福祉ビジネス株式会社】(宮城県仙台市)

代表取締役 佐藤ゆかり 氏
代表取締役 佐藤ゆかり 氏

ポイント

  • コロナ禍で経営に迫った危機をオンライン療育で乗り切る
  • IT導入によりペーパーレス化・移動が減り経費削減へ
  • 職員間交流や業務改善にも好影響

 宮城県仙台市で、2012年に創業された東北福祉ビジネス。これからの高齢化社会に向けて高齢者向けデイサービスからスタートさせた企業だ。現在は、高齢者向けに通所介護事業所「デイハウス照敬庵(しょうけいあん)」の運営や老人ホームの紹介といった事業を展開している。また高齢者だけでなく、身体・知的・精神の3区分で障がいを持つ子どもたち向けに放課後等デイサービスや就労支援といった福祉事業も手がけている。

毎日利用しても飽きない療育プログラムを準備
365日運営で保護者の負担軽減も

 障がいを持つ子どもたちへの様々な支援サービスを提供している東北福祉ビジネス。
 放課後等デイサービス「太陽の子」は、障がいを持つ小学校1年生から高校3年生までの児童向けに福祉サービスを提供している。知的障がいや発達障がい、ダウン症、身体に障がいを持つ子、また学校などの集団生活に馴染めない子どもなど、程度や状況は様々だが、そんな子どもたちの心の拠り所となっているのである。放課後“等”とあるのは、学校がある平日の放課後だけでなく、土日祝日、また夏休みなどの長期休暇にも利用できるためである。
 「今は働き方が変わってきて、共働き家庭も多いですし、シングルで育てていらっしゃる方も少なくありません。学校が休みの日に子どもを一人で家に置いておけないから仕事を休んで面倒を見なければいけない、というご家庭もあります。そんな親御さんたちの負担を減らし、事業所としてもサポートしていけたらと考え、365日営業や早朝から放課後でも長時間ご利用いただけるサービスをご提供しています」
そう話すのは、2代目代表取締役社長を務める佐藤ゆかり氏だ。

 太陽の子の特徴は、レクリエーションカレンダーというものを作り、夏まつりやピクニック、ハロウィン、クッキング、あるいは芋掘りやかまぼこ作りなど、毎日違うプログラムを用意し、子どもたちに多くの体験をさせてあげることである。子どもたちの“やりたい”“面白そうだからやってみる”“楽しい”という気持ちを優先したプログラムが実施されている。なかには、ガーナ出身の先生と楽しみながら英語に触れる時間などもある。
 「バスや地下鉄に乗って外食に行ったり、公園に行ったりするプログラムもあります。実際に自分たちで切符を買うことや公共交通機関に乗るということをみんなで体験し、ルールやマナーも学び、少しでも社会生活に近づけるように工夫しています」
 太陽の子では、子どもたちの居場所を提供し、“体験”を通じてふれあいながら、集団生活への適応や、発達や成長を促すための支援を行っている。

3障がいを持つ児童と働く親御さんを支える施設
3障がいを持つ児童と働く親御さんを支える施設

コロナ禍で急変したコミュニケーション
危機を打開するために導入したITツール

 そんな子どもたちとのふれあいを奪ったのが、新型コロナウイルス感染症であった。
 「外出することが社会的にタブーになった頃、施設の利用控えが増え、事業所の運営面で危機感が高まっていきました。もしかしたらこのまま何もしなければ最悪、事業所が閉鎖、倒産するのではないか、と不安も頭をよぎりました」
 事業所が危機感に襲われているなか、保護者は子どもたちが感染してしまうことを恐れ、利用を控えていたが、仕事はしなければならない。しかし家で子どもの面倒を見てくれる人がいないため、保護者にとっても大きな問題になっていた。子どもたちも人との交流や体験ができないことでストレスがたまってしまう悩みがあった。
 それぞれの不安を解消すべく東北福祉ビジネスがトライしたのがZoomを活用したオンラインでの療育だ。

IT導入によりオンライン療育を可能に
IT導入によりオンライン療育を可能に

 「知人の社長に体験させてもらったのが、導入のきっかけです。子どもたちとのコミュニケーションだけでなく、仕事もしやすくなると感じました」

 そう語る佐藤社長は、IT導入補助金を活用し、各事業所にパソコンを1~2台ずつ(計6台)、iPadを各事業所に2台ずつ(計10台)、Zoomなどのオンライン会議システム、通信環境を良好にするためのVPN接続機器などを設置した。

 事業所毎に公式LINEのアカウントを立ち上げ、オンライン療育を行うことを発信したり、オンラインで使うための教材を職員間で話し合いながらPowerPointで作成したり、自分たちでできることからチャレンジした。
 「最初の頃は画面の共有やミュート解除の方法が分からず操作に不慣れでした。また、こちらがZoomの環境を整備しても、保護者の多くがスマートフォンにZoomのアプリをインストールしておらず入れないといったハプニングもありました。AndroidやiPhoneの端末ごとに操作も違うため職員も戸惑いながら、インストール方法の手引を作成したり、操作説明を行いました。今では笑い話ですが、導入から半年ぐらいはいろんな失敗をしたりして試行錯誤の連続でした」

オンライン療育で英会話を楽しむ様子
オンライン療育で英会話を楽しむ様子

 実際にオンライン療育をスタートさせると、Zoomの画面越しで、久しぶりに知っている顔が映ると子どもたちは大喜び。オンラインでのふれあいも効果があると実感したという。その後もオンラインで科学マジックショーなどのイベントを開催したり、先述のガーナ出身の先生もリモート英会話を始めたりなど、少しずつプログラムを工夫しながら増やしていった。当初は参加者が1〜2名程度だったが、半年〜1年かけて利用者が増え軌道にのせることができたという。

 「子どもたちも、オンラインに慣れてくると楽しんでくれるようになりました。この経験は、子どもたちの社会生活を送る上でも有意義なものになるだろうと思い、導入して本当に良かったと思いますね」
 オンライン療養の取り組みは、業界内で先進的な取り組みだったため話題となり、東北福祉ビジネスの認知度向上にもつながった。

職員間の交流・ペーパーレス化が促進
IT導入は業務改善にも大きく寄与

 コロナ禍の影響による事業継続の課題解決のために導入したIT設備。子どもたちのオンライン療育が主要な使用目的であったが、日頃の業務においても大きな効果をもたらした。
 クラスターの発生予防のため事業所間の行き来は原則禁止。職員間の直接的な交流は急減した。しかし各事業所にはZoomが導入されていたことで、事業所間を繋いでリモート朝礼や会議を行い、職員間の交流を保った。
 「コロナ前の会議では、各人がバラバラに資料を印刷して持ってきていました。それがリモート会議ではGoogle Driveで資料を共有するようになり、情報の一元化ができました。また、印刷せずに全員が同じ画面の資料を見ますのでペーパーレス化にも役立ったり、車での往来が少なくなったので駐車場代が減ったりなど、業務改善や経費節減に繋がったことは意外な効果でしたね」
 今までは事業所毎に朝礼を行っていたが、IT導入を機に全事業所合同で朝礼を行うことで、画面越しではあるが別事業所の職員も自然と顔見知りとなった。リアルな場面では初めて会う職員も、近況報告から会話が始まるなど、職員同士の交流が深まった。

 他にも、管理職クラスや資格保有者の人材を採用の際にWEB面接可と掲載していたところ、宮城県内だけでなく、関東圏やハワイといった遠方からの応募が来るなど、様々な業務でITの効果を実感したという。

 そんなITの効果を実感している佐藤社長に、補助金の活用を考えている経営者の皆さんへのメッセージをいただいた。
「新型コロナウイルス感染症によってコミュニケーション方法ががらりと変わってきています。ITを利用することで社内業務が改善できたり、時間の削減に繋がったりして、今までとは違う方法で業務効率化を進められます。IT導入を検討されている経営者の皆さんには、補助金なども積極的に利用してIT化を進めてもらいたいですね」

 福祉には様々な人が関わり、幅広いアイデアが必要とされる。だからこそIT導入が求められると話す佐藤社長。
 「福祉はチームプレイ。職員間の関係作りが大切です。ヘルプが必要なときや別の事業所に異動したときに、職員みんな仲が良いと仕事もスムーズに進むと思います」
 ITでチームの結束力を高め、新しい福祉サービスを目指す東北福祉ビジネスの今後に期待したい。」

事業所間をZoomで繋ぎ会議を行う様子
事業所間をZoomで繋ぎ会議を行う様子

使用した補助金 - IT導入補助金

企業データ

企業名
東北福祉ビジネス株式会社
Webサイト
https://www.t-welfare.com/
設立
2012年
従業員数
57名
代表者
代表取締役 佐藤ゆかり 氏
所在地
宮城県仙台市泉区泉中央一丁目7番地1

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