2023.02.20

横浜電子株式会社

制御技術を武器に、ロボットやAIを活用した未来を描く【横浜電子株式会社】(神奈川県横浜市)

代表取締役 神田一弘 氏
代表取締役 神田一弘 氏

ポイント

  • “お客様のアイデアをカタチに”が企業コンセプト
  • 本格参入した協働ロボットのプラットフォーム構築を目指す
  • 中小企業が元気になることで社会全体を豊かにする

 神奈川県横浜市に本社と工場を構える横浜電子。各種装置や機械機器に搭載される制御盤の設計・製作を主軸に、FA(ファクトリー・オートメーション)機器や産業用ロボットの制御技術を活かした事業を手がけている。各種装置メーカーからの受託開発、一貫製造のほか、大手自動車メーカーとも取引している技術力が高い企業である。

“お客様のアイデアをカタチに”
多品種少量生産にも対応できるメーカー

 FA機器やロボット開発、医療機器など機械装置に欠かせない制御技術を有する横浜電子。制御技術は様々な機械装置に搭載されるものであり、同社としても限られた特定分野の装置に特化しているというわけではなく、お客様のニーズに応えて幅広い分野の装置を設計・製作してきた。昨今の実績では、業務用クリーニングの現場で使われるリネンサプライの大型装置、食品・医薬品メーカーでの原材料の粉砕装置やフリーズドライ装置などの受託開発が増えている。制御技術は様々な装置に欠かせないということもあり、発注数が少ない要望にもきめ細やかに対応。いわゆる多品種少量生産の要望にも柔軟に応えてきた。
 「本当に、ありとあらゆる分野の装置を手がけてきました。製薬会社、化学会社、特殊車両の会社など。過去には半導体製造装置の一部を担当したりもしました」そう話すのは、2代目代表取締役社長を務める神田一弘氏だ。
「私たちは、“お客様のアイデアをカタチにする”—そういう企業ではないかと思います。基本的に、ご相談いただいたものに対してはお断りしないようにしています。いろいろなご相談にお応えしているうちに自分たちも磨かれていきますから」とお客様のニーズを叶えることで会社を成長させてきた。

 さらに横浜電子の特徴は、設計から製作、試作、組立、設置までワンストップで対応できる技術力を保有していること。営業と技術者が一体となってお客様が抱える課題に対して様々な提案を行う。同社の技術者は特定技術のスペシャリストではある一方で、マルチプレイヤー的に活動している。
 今でこそ制御技術を前面に打ち出し、ロボット分野まで視野を広げようとしている横浜電子だが、1970年の創業の頃は通信機の基板を生産する下請け工場であった。創業者は、神田社長の奥さまのお父様である永田祥二郞氏。1973年頃からは新聞社向けの輪転機(印刷機械)メーカーの下請けとなり、その頃から制御盤や制御装置を手がけるようになった。ただし取引先はあくまでも輪転機メーカーと限られており、自ら営業することも少なかったという。しかし2000年を過ぎた頃から大手機械メーカーがこの分野に進出するようになり、下請けの仕事が急減。会社存続のために、2005年頃から、それまでに培ってきた制御技術を“武器”に営業活動をはじめることになり、現在のような制御技術を得意とする企業になった。

営業・技術者が一体となりお客様の課題を解決
営業・技術者が一体となりお客様の課題を解決

ロボットやAIを積極的に活用し
新しい10年ビジョンを描く

 事業を継承し、発展させてきた神田社長は、次の時代を見据え、“10年ビジョン”を掲げている。内容を要約すると「横浜電子はロボットやAIなどデジタル技術を有効活用しながら、お客様のアイデアをカタチにする会社であり、地域社会からも未来創造企業となっていくこと」と掲げている。現在のメイン事業である「制御盤の設計製作」「制御技術を応用した製品の設計製作」を軸としながら、「ロボット化を推進し協働ロボットの分野での活躍」に挑戦をしようとしている。
 昨今、「IoT化」「ものの見える化」という言葉も広まっているが、それらを実現するためには、アナログからデジタルへ変換する技術が重要である。その技術力は、横浜電子が得意とするところだ。
 「5年後を見据えた方針として、IT化、ロボットの導入、データの利活用などを通して、企業としての付加価値を高め、生産性の底上げを勢いづけていこうと考えています」
 それらの事業展開に伴い、平均年齢が上がっている技術者の“技術”を継承できるように若い人材も採用。2名の新卒社員を採用した。
 「まだ漠然としていますが、協働ロボットのソフトとハードのプラットフォームを自社で構築できないかと考えているところです。ロボット技術は、制御技術の隣接産業のためトライしてみたい分野です」
 そんな協働ロボットの分野をけん引していきたいと話す神田社長の背中を後押ししようとするのが、「事業再構築補助金」だ。現在、申請に向けて準備を進めており、申請は来年度以降になりそうだが、事業再構築補助金では設備投資でも利用できるので、最大限の金額の申請を考えているという。

10年ビジョンを掲げ協働ロボット分野へ挑戦
10年ビジョンを掲げ協働ロボット分野へ挑戦

中小企業が元気になることが
日本の未来を創っていく

 神田社長の取り組みの一つに隣接産業との連携がある。先述のロボット事業もそうだが、少し異色に見える紅茶のECサイト販売も紹介しておきたい。こちらは神奈川県中小企業家同友会のセミナーでの紅茶販売者との出会いがきっかけであった。
 「起業したばかりの方で、販促を手伝ったのがきっかけでした。旧知の飲食店やカーディーラーに紅茶を置かせてもらったら、何百個も買ってもらえ、クチコミでさらに販売数が伸びました。そこからさらに興味を持って、外部により発信しなければと考え、ECサイトの立ち上げを計画しました」

長時間ポットに入れても渋みがでない
長時間ポットに入れても渋みがでない

 小規模事業者持続化補助金を活用し、紅茶販売のECサイト「ジェム (J’aime)」を立ち上げた。2023年2月時点では未完成ではあるが、すでに公開されており、横浜電子のホームページにもリンクが貼ってある。

 商品自体も、スリランカの王族が経営する農園からの輸入品で非常に美味しく飲めるという。神田社長はハイビスカス・フレーバーの紅茶を焼酎のお湯割りにして楽しんでいるそうだ。さらに神奈川県内の日本茶生産者とのコラボビジネスを考えているという。

 「人との繋がりといいますか、ご縁といいますか。ご縁も、繋がりも、何ごとにも意味があると捉えています。すべてのご縁を大切にする心を持つことが大切だなと思いますね。そういうことも10年ビジョンには盛り込んでいます」
 制御技術とは全く関係ないと思える紅茶だが、神田社長は自身に隣接する人たちにも受け入れられるということは、現在の事業と全く関係ないとは言い切れないと断言する。こんな風に地域の人たちとも手を携え、地域ぐるみで未来創造社会を描いていきたいと話す。

熱伝導率測定スピードが飛躍的にアップ
熱伝導率測定スピードが飛躍的にアップ

 ほかにも、神田社長はこれまでいくつかの補助金を申請し、開発に活用してきた。その一つが、平成27年度の「ものづくり補助金(令和元年度補正予算以降の正式名称:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)」で、GHP法(※)による熱伝導率測定装置を製作した。装置自体はもともとあったものだが、同社が手がけたのは測定時間の短縮化。例えば、測定に10時間かかっていたものが5時間でできるようになるといったものだ。
 「GHP法の熱伝導率測定装置は、実は当社しか作っていません。国内ではオンリーワンなんですよ。ただ、お客様としては高額な装置は欲しいのではなくて、装置から得られたデータが欲しいのです。その辺りが痛し痒しなんですけどね」と苦笑する。

 また、ジェグテック (J-GoodTech) も利用している。ジェグテックは、中小機構が運営する国内外の大手企業や中小企業同士をつなぐ無料のビジネスマッチングサイトだが、何かしらの課題を抱える企業に対して、これまでいくつかの提案をし、新たな繋がりや新規顧客とのビジネスも生まれているという。

 中小企業を応援する補助金や仕組みを利用することについて、
 「将来どのように事業を発展させていくか、どうやって利益を出していくかは中小企業が自分自身の将来像を考える良い機会になると思います。自社事業や自社製品に自信があっても、外部へプレゼンするには、それなりの見せ方をしなければなりません。補助金の申請でも、どのようにプレゼンすれば採択してもらえるかということに繋がりますし、非常に役に立ちます。補助金を活用させてもらいながらも、とにかく中小企業が元気にならないと社会全体の景気も良くなりません。事業を推進するうえで、補助金が活用できる場合は積極的に利用していただいて、みんなで中小企業を良くしていきましょう。」と神田社長は力強く語る。

 中小企業が元気になり豊かな社会を創っていくことを願いながら、“10年ビジョン”を実現するために横浜電子はさらなる成長を目指している。

※GHP法:Guarded Hot Plate(保護熱板式)…断熱材の熱伝導率を測定する方法

使用した補助金 - ものづくり補助金 小規模事業者持続化補助金

企業データ

企業名
横浜電子株式会社
Webサイト
https://www.y-denshi.com/
設立
1970年
従業員数
10名
代表者
代表者
所在地
神奈川県横浜市保土ケ谷区仏向町937-2

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