2023.01.24

庄内機械株式会社

積極的な技術開発で大型生産ラインのパイオニア的存在に【庄内機械株式会社】(秋田県能代市)

代表取締役 亀田幸作 氏
代表取締役 亀田幸作 氏

ポイント

  • 積極的な技術開発によって時代に応じた顧客ニーズに対応
  • 内製化による技術力と生産性の向上によりコスト60%削減
  • オープンな社風で次代を担う若手技術者育成

 秋田県能代市で昭和34年に創業された庄内機械。「現代の名工」として表彰されたこともある創業者が、木材加工機を主力製品とする鉄工所としてスタートさせた企業だ。現在は主に全国の建材メーカーや住宅メーカー向けの建材を製造する自動加工の各種木工機械や大型生産ラインの製造を手がけている。

建材の生産ラインを
“オーダーメイド”で製造する

 庄内機械が手がける自動加工の大型生産ラインとは、一体どのような製品なのだろうか?
 たとえば住宅用床材の製造ラインであれば、材料となる木材をサイズ通りにカットし、表面に溝を切り、さらに木目などが印刷された樹脂シートを表面に貼って、できあがった製品を輸送用に梱包するまでの一連の工程をシームレスに実行する。機械というよりそれ自体が一つの自動化された「工場」といえるかもしれない。
 「ここ20年ぐらいは単体の製造機械より、すっかりライン製造の仕事が増えました。生産ラインの仕事は、顧客の工場にあわせて一つひとつ設計するオーダーメイドの製品で、私が知るかぎりこうした住宅向けの各種建材用の生産ラインを製造している企業は他にはありません」
 そう話すのは、2020年から代表取締役社長を務める亀田幸作氏だ。
 庄内機械がこの分野で大きな地歩を築いてきた要因は2つある。まず、顧客のニーズと時代の要請に応じた新しい技術開発を積極的に手がけてきたこと。同社は創業時から新技術開発に熱心で、技術に関する6件の特許を保有している。もう一つは電気工事や制御装置など、本来は外注に頼る部分も自社ですべて対応していることだろう。亀田社長によると、内製でまかなう方が顧客の要望にきめ細かく対応しながら、納期・生産管理をしっかりコントロールできるメリットがあるという。

顧客の工場に合わせ設計するオーダーメイドの機械

つねに新しい発想で
世界唯一の新技術開発を目指す

 「わが社の生命線はなんといっても技術開発力。つねに新しい発想で、他の追随を許さないイノベーションを生み出していきたい」と亀田社長は熱を込める。
 最初に庄内機械がものづくり補助金(令和元年度補正予算以降の正式名称:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)を申請したのは、亀田社長が専務だった平成27年度の「コンピュータ制御のプレスブレーキ機で高精度部品を内製化し組み立て時の負荷を減少」という事業計画だった。この事業計画は前述した内製化の一環で、鋼板を高精度に曲げ加工するコンピュータ制御のプレスブレーキという機械を新たに導入し、加工精度向上と大幅な生産性の向上を一挙に実現するものだ。集塵ダクトを外注製作していたものが内製化できるようになり、コストを60%抑制することに成功した。

生産性向上を実現したプレスブレーキ機

 そして令和2年度、事業計画「コーターによるUV塗工の新技術開発」で再びものづくり補助金を申請した。こちらは建材表面にUV(紫外線)を照射することによって硬いコーティング塗膜を形成するUV塗工技術の新技術。庄内機械が独自に開発したUV塗工機によって従来は何度も塗り重ねながら仕上げなければならなかった鏡面加工を、一度の工程で済ませることができるようになった。亀田社長によると、高級システムキッチンなどの用途を想定しており、国内市場だけでなく、中国に販路を持つ建材メーカーや住宅メーカーへの営業活動を進めている。

塗工工程を効率化したUV塗工機

顧客が困っていることを
解決するためのイノベーションを

 「今でも自分は経営者より、技術者に向いていると思う」
と微笑みながら語る亀田社長自身は技術者出身。若い頃に東京の企業で部品設計の仕事に従事していたが、結婚を機に生まれ育った秋田に帰郷。再就職した庄内機械では大がかりなシステム設計に取り組めることと、顧客と直接顔を合わせたものづくりができる喜びがあったと回想する。

この部屋で顧客の生産ラインが設計される

 経営者としての亀田社長は、若手社員が積極的に新しい技術開発にトライしてくれることを期待して技術者教育にも力を入れている。例年、新卒社員を採用しており、社内には若い社員のやる気に柔軟に応えていく自由な社風があると語る。
 「新技術の開発に苦労はつきもの、時にはつらいと感じることもあります。しかし上手くいった時の喜びは他に代えがたい。当社には『庄内機械さん、こんなことができませんか?』と私たちにチャレンジを促してくれるお客様がいらっしゃいます。お客様それぞれが困っていることを気軽に私たちに相談していただける。それは技術者集団としてたいへん恵まれた環境だと思っています」
 もちろん中には技術だけでは解決できない顧客の課題もあるが、少しでも可能性があれば「では、やってみましょう!」と即座に要望に応えることができる、フレキシブルでイノベイティブな技術者集団として成長し続けたいと亀田社長は考えている。
 「私は自分を含め全国の製造業経営者に積極的にイノベーションに挑戦してほしいと思っています。そのために欠かせないのが若手人材育成と技術開発や試作品のための資金力です。『ものづくり補助金』は私たちのような小さな地方の企業が資金を得ることができるありがたい制度だと感じています」
 めまぐるしい技術革新の中で、つねに独自の技術開発によるイノベーションを志向する庄内機械。「新しいUV塗工技術をさらにグレードアップさせることで、次の主力製品にしていきたい」と亀田社長の視線はすでに次のチャレンジに向けられている。

日本全国からオーダーがある庄内機械

使用した補助金 - ものづくり補助金

企業データ

企業名
庄内機械株式会社
Webサイト
https://shonai-kikai.com/
設立
1970年
従業員数
48名
代表者
代表取締役 亀田幸作 氏
所在地
秋田県能代市河戸川字上大須賀36-9

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