2022.07.08
生産性向上に取り組む企業事例
健康づくり支援やスポーツ支援などの事業を展開するハイクラス。代表の位髙氏はスポーツ健康科学の博士号を持ち、スポーツメンタルトレーニング指導士や管理栄養士など、高い専門性を持つメンバーとともに事業を拡大中だ。創業から5年を過ぎ、組織力強化が必要になってきた今、社内コミュニケーションや顧客管理を効率的にできるよう、新たにITツールを導入して環境整備を進めた。
ハイクラスは、専門性を生かしてスポーツや健康領域に貢献したいとの思いで創業された。健康づくり、スポーツ活動支援、そして研究・情報発信という3領域を同時に推進する。健康づくり支援事業では企業の健康経営や行政の市民向け運動教室等などのプログラムを多数展開する。スポーツ活動支援事業は、メンタルや遺伝子検査などでアスリートの競技力向上支援をはじめ、学校の部活支援などもおこなう。学術的な研究も傍らでおこない、理論と実践を組み合わせて質の向上をはかっているのも特徴だ。
拡大期にある同社では、代表の位髙氏自身、運動教室などの指導から、講演活動、また企業や自治体への営業まで何でもカバーする。営業専任者をおいているわけではない分、位髙氏をはじめとした専門家、トレーナー自身が企業や自治体、個人からの相談に対応する。だからこそ深い話をすることができ、課題に合ったプログラムをすぐ組み立てることができる。
運動教室は定期的な継続開催になることが多く、体力測定とあわせたパッケージなど、一定期間のサービスとして提供することが多い。アスリート支援となるとメンタルトレーニングの提供や、体質に合わせたトレーニングをするための遺伝子分析など、個別対応のサービスも展開する。
同社で活躍するトレーナーは、業務委託型で自身の仕事と両立させている人も多い。少人数で始めた会社であるが、ここ1、2年提携する人がずいぶん増えてきた。多様なメンバーと資料を共有したり、コミュニケーションをとりやすくしたりする必要性が高まるなか、ITツールの導入を考えることとなった。
まず導入したのは、メール、文書ソフト、オンライン会議ツールなどを完備したクラウドサービスだ。使い慣れている文書ソフトがそのまま使えるクラウドサービスを選んだ。これらのツール以外に、運動教室実施後に使えるアンケートフォームや、アスリート個別予約の管理に使えるカレンダー機能もすべて完備されている点がよかったという。また、オンライン会議ツールはコロナ禍での教室開催にも大いに役立った。テレワークの合間に30分の運動教室をおこなうなど、企業の健康教室などでオンライン開催を行うところも出てきたからだ。通勤がなくなると運動量が減る傾向にあるというのが、在宅勤務の増加で見えてきた。従業員の健康増進に力を入れたいという企業も出てきて、オンラインプログラムのニーズが増えてきたのだ。
また、アスリートの個別支援におけるメンタルトレーニングや遺伝子検査のフィードバックにおいても、オンライン実施が増えた。双方の利便性も高い。オンライン会議の予約がお客様側のカレンダーにも通知できるようになったことで、お客様側が失念してキャンセルが起こってしまうという事態も減少した。
営業資料や社内資料をクラウドに保管し、どこからでもアクセスできるようになったことで多様なメンバーとの共有も容易になった。クラウドサービスの一環で使える共有フォルダなので、ITに不慣れなメンバーでも戸惑いは少なかったそうだ。
従来も、メールやSNSグループ等でリモートコミュニケーションをとることはできていた。しかしクラウドサービス内のツールに一元化することで、情報集約、資料管理などが容易になった。ビジネス仕様のツールに切り替えることは、今後も増加が見込まれるBtoB事業推進にとっても必要なことであった。
もう1つ導入したのは、顧客管理に向けたCRMツールだ。たとえばプログラム提供期間が終わったあと、しかるべきタイミングにフォローすることで次のサービス提供につなげたい。あるいは、個別支援のアスリートに適正なタイミングで連絡を入れていきたい。そう思いつつも細かい管理がしきれず、フォローしそびれてしまうことが過去には生じていた。タイムリーにお客様とコミュニケーションを取っていくためにも、このタイミングでツール導入をしておこうと考えたのだ。
ITに詳しいメンバーがいるわけではないので、ツールの選定や導入については外部のIT専門家に支援してもらった。ちょうど、ホームページの充実に向けて支援してくれるIT専門家がいたため、その人にこのツール支援も依頼したのだ。ホームページへのアクセス者を増やしていくためには、SNS発信やメールマーケティングも重要になってくる。しかし、各自がめいっぱい活動している現在、そこまで時間が割ききれないのも現状だ。だからこそデジタル化を進め、業務効率をあげていかないといけないということもあり、同じタイミングでツール検討をはじめた。
クラウドサービスの活用によって、生産性向上の手ごたえも得られている。たとえばアンケートをとる際に、従来は紙で配布して事後集計をしていた。しかしオンラインフォームを使えば入力や集計作業の時間がいらず、画面上で自動的に集計できる。また営業活動においてもオンライン対応がスムーズにできるようになり、移動時間の効率化がはかられた。
今後は高品質を維持したまま、より組織力を高めて多くの人の健康支援、運動指導を進めていきたいと位髙氏は話す。さらに、各地のフィットネスクラブや専門家との連携も発展させていけないかと考える。たとえばコロナ禍においては、トレーナー自身が濃厚接触者となり動けない期間が出てしまうこともある。個人事業主であればそこで活動が止まってしまうが、ハイクラスでは登録しているトレーナーが複数いるので、相互に融通しあうことができる。
今後は、運動教室の参加者がアスリートの応援に行ったり、アスリートたちの支援データが研究活動に生かされたりと、三位一体でおこなう活動領域同士での相乗効果も起こしていきたいという。さらに多様な人とつながり、多様なコラボレーションを生み出していくことが見込まれる。だからこそ、今この時期に、組織の仕組みづくりを整え、生産性高く進化していこうと取り組んでいる。
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